【MLB】レギュラー目前。青木宣親は、なぜ少ないチャンスを生かせたのか? (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 青木のこんな談話を目にしたことがあった。

「(ヤマを)張っていたボール。ちょっと博打(ばくち)ではありました」
「球がシュート回転して外にいくことが多い投手」

 投手の特徴と傾向を読み取り、自分のアプローチを決めて打席に入っていたことがうかがえる。対戦のない投手を相手に一発で仕留めなければ、次のチャンスが巡って来ない彼の状況をよく表している。同時に"捨てる勇気"を持てる打者だということも伝わってくる。でなければ博打はうてない。このバランスこそが青木の生命線なのだ。

 ブルワーズの外野陣はレフトのライアン・ブラウンとライトのコーリー・ハートは鉄板。センターのポジションをナイジェル・モーガンとカルロス・ゴメスが先発投手の左右によって使い分けられ、青木はこのふたりにどこまで追いつけるのか? それが開幕前の青木の立ち位置だった。しかし、今は違う。

 対右投手の打率が3割9厘。対左投手は3割3分3厘。これが、青木がここまで残してきた成績だ。右投手用のモーガンが、右投手に対し2割3分3厘。左投手用のゴメスが左投手に対し3割2分4厘。青木の成績がふたりのスペシャリストをいずれも上回り、通算打率でも2割8分3厘のゴメス、2割2分3厘のモーガンを大きく引き離している。

「それでも青木にはレギュラーのチャンスはないのか?」

 よくこんな声を耳にするが、慌てることはない。確かに、外野のポジションを奪う上で、決して強くない青木の肩は大きなハンディでもある。しかし、状況に応じたバッティングができる点や、バントのうまさもチームナンバーワン。ロン・レネキー監督も使い勝手のよさに加え、ゲームプランを着実に遂行してくれる青木の力は十分に理解している。守備の不安はあるが、レギュラー奪取は時間の問題だといえる。

 青木宣親30歳。メジャーでプレイする日本人野手の評価に、新風を巻き起こすことができるのか。コンディションの維持に務め、さらに光り輝いて欲しい。

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