【MLB】『ボビーマジック』はレッドソックスを再建できるか? (2ページ目)
さっそくバレンタイン監督は、今シーズンからロッカーでの禁酒を決定しました。昨年、シーズン終盤に先発投手たちがロッカーでビールを飲んでいたと報じられたので、チームに規律を求めるバレンタイン監督らしい方針だと思います。というのも、バレンタイン監督が育ったドジャースは、若いうちから選手にチームワークやマナーを教え込む伝統があるからです。レッドソックスでも1年目からチームをバレンタインカラーに染めるつもりでしょう。
昨年の開幕前予想は、レッドソックスが世界一の大本命と言われていました。しかし今年の下馬評は決して高くありません。それは、先発投手の駒が揃っていないからです。ジョシュ・ベケット、ジョン・レスター、クレイ・バックホルツの3人は確定ですが、 ジョン・ラッキーはひじの故障によりシーズン絶望で、松坂大輔投手も夏場ごろの復帰予定。ローテーションをどうやりくりするのか、レンジャーズ時代に大胆な若手起用で旋風を巻き起こしたバレンタイン監督の手腕に注目です。
また、下位にいたチームを躍進させてきた実績も、バレンタイン監督の魅力です。今年はヤンキースやタンパベイ・レイズのほうが高評価なので、バレンタイン監督にとっては逆に大きなチャンス。レッドソックスには不安な投手陣を補う自慢の強力打線があるので、バレンタイン監督がどんな打順を組んでくるのか、非常に楽しみです。さっそく、オープン戦でも1番のジャコビー・エルズベリーと2番のダスティン・ペドロイアを入れ替え、新しい打順を試していました。バレンタイン監督は今シーズン、状況に応じてどんどんラインアップを変えてくるのではないでしょうか。
そしてもうひとつ、プレイオフ進出チームが10チームに拡大したことも、バレンタイン監督にとって追い風となりそうです。2000年のメッツ時代、そして2005年の千葉ロッテ時代と、いずれも地区2位、シーズン2位ながらもプレイオフを勝ち抜いて頂点を掴み取りました。短期決戦の戦い方を熟知している監督なので、「プレイオフにさえ行ければ」という考えも大いにあると思います。レッドソックスの下馬評が高くないので、バレンタイン監督にとって今年は腕の見せ所。ボストンでどんな『ボビーマジック』を見せてくれるのか、今年のレッドソックスは注目です。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
2 / 2