甲子園を震撼させた"21世紀の怪物"寺原隼人 158キロを叩き出す直前に見せた剛速球の衝撃 (2ページ目)
「間に合いますから......」と、こちらが手綱を引こうとしても、「大丈夫ですよ、慣れてますから!」の一点張り。グラウンドに着いた時には、背中に嫌な汗をびっしょりとかいていた。
寺原のピッチングは、すでに始まっていた。当時、140キロどころか、すでに150キロを突破していると言われていた高校球界屈指の剛腕だった。建物の中には、4、5人が同時に投げられる立派なブルペンがあった。外から中をのぞくと、いちばん手前で、ガッシリしたユニフォーム姿の寺原が投げている。
投手と捕手を真横から見る位置だった。寺原の指先を離れたボールが、しゃがんで構える捕手のミットに突き刺さる。ものすごい破裂音が聞こえてくるのに、肝心のボールが見えない。真横からなら、どんなに速いボールでも、定規で引いたような白い線ぐらいは見えるものだ。ところが、その「白線」すら見えなかった。
「見えないすね......。大丈夫っすか......」
同行の編集者が、この日初めて口をきいてくれた。
横から見えなくても、正面から見ればなんとかなるだろう......。妙に腹が据わっていたのは、車の中でさんざん怖い思いをしてきたせいだったのかもしれない。
【きれいなバックスピンの快速球】
さて、ユニフォームに着替えて、ブルペンの寺原のもとへ向かう。取材する際は、誰が相手でも最初は必ず握手から始める。それを信条にしている。
150キロの剛速球を投げ込むのだから、どんなゴツいヤツかと思ったら、笑顔がかわいい童顔だった。ちょっとホッとする。
それからブルペンで向き合い、まずは立ち投げで10球。
「さあ、やろうか!」
こちらからきっかけをつくれるのも、最初の笑顔があればこそ。この余裕があれば、全国屈指の剛速球も10キロぐらい遅く見える。
「はい、カモーン!」
かけ声とともに投げ込まれた1球は、とてもではないが遅くなど見えなかった。そりゃそうだ。相手はもう、すっかり肩ができている。速い。そして、きれいなバックスピンの品のいいストレートだった。剛速球というより、「快速球」だ。
「よう捕れるなぁ! 怖くないんですか?」
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