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【高校野球】大谷翔平を攻略して勝利も... 盛岡大附を待っていた包囲と怒声、甲子園決定直後の異常事態 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Genki Taguchi

「正直、あれはファウルだと思います」

 千田が素直に自分の考えを述べたうえで、当時の気持ちを明かす。

「高校野球は、敵の自分たちも『ファウルだと思います』と言ったところで判定は絶対に覆らないんで。だから、ベンチで『もう1回、ホームラン打とう。今度はバックスクリーンな!』みたいにみんなで話していました」

 レフトポールを真正面に近い位置で捉えられる一塁側ベンチで二橋の一発を見届けた関口は、今でも自分に言い聞かせている。

「あれは、レフトポールをかすってスタンドに入ったホームランだと信じたいです」

 ファウルかもしれないと思った打球がホームランとジャッジされた関口は、喜びをあらわにした。ただ、4対0と点差を広げたといっても試合は序盤であることを考慮し、すぐに冷静さを取り戻す。花巻東ベンチが審判団に判定を確認したことで中断していた最中も、「いったん、落ち着こう」と選手たちを諭した。

 結果的に二橋の"疑惑"とされる3ランが、試合の趨勢を分けた。5対1で迎えた9回裏、大谷のタイムリーヒットなど花巻東の猛追を受けるも5対3で逃げきり、盛岡大附は4年ぶりに夏の甲子園出場を決めたのである。

【歓喜の裏で渦巻いた異様な空気】

 本来ならば祝福されるべき試合後のグラウンドが、険悪なムードに包まれる。

 試合中から「外人部隊が!」などの野次を背負いながら戦っていたが、いよいよ「審判に助けられたな!」「実力で勝ったわけじゃない!」と、罵声は過激となっていく。

 千田が複雑な表情を見せる。

「花巻東が県内のメンバーだけだからよくて、うちは県外の選手もいるからダメみたいな。『そう言われるのは宿命なのかな』って、自分らは耐えていましたけどね」

 チームは閉会式や取材が終わっても、すぐ帰路につくことができなかった。花巻東の敗戦を不服とした観衆が、球場の入口周辺を取り囲むように群がっていたからである。

 怒声や奇声、ざわめきは選手たちが隔離された控室にも届いていた。

「オレらが今まで、どんな思いでやってきたか知らねぇくせによ!」

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