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【ドラフト】「大阪桐蔭史上最高の素材」森陽樹に重なる達孝太と才木浩人 未完の190センチ右腕は伸びしろしかない (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 2年秋、3年春と近畿大会に先発、救援で登板するも敗れ、最後の夏も大阪大会決勝(東大阪大柏原)で先発するも敗退。2回に2点を先制され、3回を投げ終えたところで同級生の中野大虎にマウンドを譲った。この試合に勝利して甲子園で投げていれば、スカウトの評価も違ったものになったかもしれない。だが、森はこう語る

「夏は、自分的にはあまりよくなかったんで......」

 夏の大阪大会、森は4試合で16回を投げ、被安打6、四球2、奪三振20、失点2。相手チームのレベルはさまざまだったが、数字的には文句なし。ただ、失った2点は決勝で与えたものだ。

 決勝の日、試合前の投球練習の段階から、アウトコースへ引っ掛ける"らしくない"球があった。目視レベルだが、足を上げて投げにいく際に上体が三塁側に傾き、ヒジの出所もやや低く感じた。後日、そのあたりを本人に向けると、こんな答えが返ってきた。

「いい時はストレートでファウルが多く取れるんですけど、あの試合は初回から芯でとらえられた内野ゴロがあったりして、調子がいい感じではなかったんです」

 そしてこう続けた。

「自分のいい時は、キャッチャーに向かって自信を持って思いきり投げ込める時。そういう時は、ほんとに打たれる気がしないんです」

【1年秋以上の衝撃は残せず】

 以前、チーム関係者から「森の能力に中野のメンタルがあれば最強」という声を聞いたことがあるが、確かに森はその日の調子、気持ちが結果につながりやすいタイプに見えた。たとえ調子が悪かったとしても、悪いなりに安定した力を出せるかが、今後の成長を担うポイントになるだろう。

 夏の大会に関して、ひとつ加えておくと、サヨナラ勝ちした準々決勝の大阪偕星学園戦では9回をひとりで投げきり完封。森は「あの試合もあんまりよくなかったです」と言ったが、被安打3、奪三振12、四球1。ふつうに見れば、これ以上ない内容のピッチングだった。

 しかし、1年秋のあのピッチングから求められるものは限りなく高い。心・技・体がまだまだ噛み合いきれず、森の高校野球は終わった。

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