【高校野球】U−18侍ジャパンの選手たちが口々に語った指揮官への感謝 小倉全由監督が「名将」と呼ばれる所以 (3ページ目)
大会連覇を目指した小倉全由監督(中央)率いる侍ジャパンU−18のメンバーたち photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る 関東一の坂本慎太郎は、小倉監督について次のように語る。
「自分の考えを伝えると、思いきりやらせてくれるというか、自分たちを信じてくれているのがよくわかります。結果が出なかったとしても『監督の責任だから』と言ってくれる。その言葉に応えたい一心でやってきました」
さらに坂本は「それでも自分はあまり結果が出なかったですけど......」と苦笑いを浮かべ、こう続けた。
「自分のチームは中軸を打ってきましたが、今回は9番。役割は1番の(岡部)飛雄馬につなげることだと思ってやってきたのですが......。そんな自分の気持ちを小倉監督はちゃんと理解して、打席に立たせてくれました。
アメリカ戦で自分はエラーをしてしまったんですけど、『攻めた結果のミスなんだから仕方ないよ。みんなカバーしてくれるし、そういう姿勢なら流れが来るから』って言ってくださった。とにかく、ミスをしたとしても不安にさせない言葉をかけてくれる。そのおかげでどんな状況でも積極的にプレーできたと思いますし、攻める気持ちはずっと持ち続けなきゃいけないと思いました」
【もうユニホームは着ない】
アンダースローとしての期待もあって招集された辻琉砂(履正社)は、今大会9試合中2試合に登板。そのうちスーパーラウンドのパナマ戦では、満塁のピンチで3番手としてマウンドに上がった。しかしストライクが入らず押し出し四球を与え、打者ひとりで降板となった。小倉監督は「難しい場面で登板させてしまい申し訳なかった」と頭を下げたという。
決勝戦後、小倉監督は準優勝に終わった悔しさをにじませながら、最後まで戦い抜いた選手たちへの感謝と労いの言葉を口にした。
「相手があれだけ喜んでいる姿を見ると、悔しさがいっそう強くなりますよね。負けてそのままで終わったら、それこそ本当の負け。この悔しさを糧に、自分を成長させてほしい。それが人生ですから。負けたままでいないように、選手たちにはこれから成長してもらいたいですね」
小倉監督はいつものように穏やかな表情を見せ、静かにその場を後にした。「もうこれでユニホームは着ないと思います」と語り、監督として最後の試合になることを示唆した。世界一は届かなかったが、選手の気持ちを汲み、最後まで寄り添い続けた姿は、20人の"教え子"たちの心に深く刻まれたはずだ。
著者プロフィール
沢井 史 (さわい・ふみ)
大阪市出身。関西のアマチュア野球を中心に取材活動を続けるスポーツライター。『ベースボールマガジン』『報知高校野球』などの雑誌や、『スポーツナビ』などのweb媒体にも寄稿。2022年7月には初の単著『絶対王者に挑む大阪の監督たち』(竹書房)を出版。共著としても8冊の書籍に寄稿している。
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