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【高校野球】U−18侍ジャパンの選手たちが口々に語った指揮官への感謝 小倉全由監督が「名将」と呼ばれる所以 (2ページ目)

  • 沢井史●文 text by Sawai Fumi

 大会期間中は毎試合前に小倉監督の囲み取材が行なわれた。小倉監督はメディアの質問に答えるなかで、「選手を信じたい」という言葉を何度も口にしていた。

 8月28日から合宿が始まり、大会を含めてもおよそ3週間という短期間で、どれだけ選手の特性を把握し、信頼関係を築けるか。各校の精鋭が集まり、なかには個性の強い選手もいるだろう。そのなかで指揮官が選手を信頼することは、容易なことではない。

 しかし小倉監督は、限られた時間の中で選手を見極め、信頼を寄せながら起用していた。

 不動の1番打者として、打線を牽引した岡部飛雄馬(敦賀気比)は、小倉監督についてこんなことを話してくれた。

「小倉監督は何か指示を出したあと、必ず最後に『失敗してもいいんだよ』と声をかけてくださいます。私たちにとって失敗やミスは許されないもの、絶対に避けなければならないものだと思っていますが、『ミスをしても取り返すチャンスはある』とも言っていただける。そう言われることで、失敗を恐れず思いきってプレーすることができました」

 一次ラウンドの南アフリカ戦では、こんなこともあった。

 試合前に降雨予報が出ていたためグラウンドには大きなシートが敷かれていた。しかし雨はほとんど降らず、シートを撤去しようとしたものの、球場スタッフの人数には限界があった。そこで助っ人を呼ぶと、日本ベンチからユニホーム姿の数人が加わり、そのなかには小倉監督の姿もあった。

 一緒に出てきた大角健二コーチは、小倉監督にベンチに戻ってくださいという素ぶりを見せたが、小倉監督はそのまま作業を続けた。その時のことを小倉に尋ねると、「ああ、あの時ね」と笑みを浮かべ、こう口にする。

「ああいう時は、誰かがやらなきゃいけないから。何か困ったことがあった時に、すぐにできるようじゃないとダメ」

【不安にさせない言葉をかけてくれる】

 国際大会では、大会中に不調に陥ったり、本来のプレーを発揮できなくなる選手が出ることもある。今大会では、大栄利哉(学法石川)が送球に苦しんだ。投手と捕手を兼ねる"二刀流"として招集されたが、南アフリカ戦で中野とバッテリーを組んだ際に思うように返球ができず、途中交代でベンチに退いた。苦労する姿を見た小倉監督は、その後の練習で大栄と時間をかけてキャッチボールをしていた。

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