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ドラフト戦線の隠れた実力者が青学大にいる! 即戦力になれる逸材の天才スラッガー・小田康一郎 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 小田の言う「ゾーン」とは、必ずしも「ストライクゾーン」と同義ではない。あくまでも小田の感覚であり、対戦投手や状況に応じて変わっていく。時には小田のイメージする「ゾーン」を通過しなかったのに、球審に「ストライク」とコールされることもある。だが、小田は「その場合は仕方がない」と割り切っているという。

「それを『ストライク』として振ってしまうと、自分が描いているゾーンが広がって、感覚が崩れてしまうので。だから、自分を信じて疑わないようにしています」

【バットを振らないという選択】

 昨秋10月にはリーグ戦の試合中に右有鉤骨を骨折し、戦線離脱するアクシデントがあった。即座に手術をし、約1カ月半後にはバットを振れるようになった。だが、小田は少しでも右手に痛みが走ると、バットを置くようにしていたという。

「痛みが出ない範囲で終わらせました。冬に振り込みをするバッターも多いと思うんですけど、自分はバッティングをおかしくしたくなかったので」

 有鉤骨骨折から復帰する際に、打撃感覚を崩す選手は多い。無意識のうちに古傷をかばい、強くコンタクトできなくなる打者もいる。小田は感覚を崩さないため、あえて「振らない」選択をした。

「自分のなかで、頭と体で覚えている自信はあったので。恐怖心がなく振れるようになれば、開幕まで2カ月あれば大丈夫だろうと。自分の考えを安藤監督が理解してくださったのも、救いでした」

 バットを振らない分、例年以上にブルペンのバッターボックスに入り、投手の投球に目を凝らした。幸い、青山学院大には今年のドラフト上位候補である中西聖輝や、来年のドラフト上位候補の鈴木泰成など、大学屈指の逸材がひしめいている。2月中旬になると「気持ちよくバットが振れるようになった」と小田は振り返る。

 昨秋までに、青山学院大は東都大学リーグ4連覇を成し遂げていた。2年前には常廣羽也斗(広島)、下村海翔(阪神)、1年前には西川と佐々木。2年連続でドラフト1位を複数も輩出した例は史上初である。

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