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【高校野球】神奈川屈指の進学校、川和の左腕エース・濱岡蒼太はなぜ「高卒→プロ」にこだわるのか? (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 平野監督は「ただ」と言って、こう続けた。

「有識者からは『きれいなボールを目指すべき』と言われたのですが、私はそれでは濱岡のよさを消してしまうと思っています。持って生まれた『ギフト』ですから、この球をベースにピッチングをつくっていけばいい。対になる変化球を磨けば、その組み合わせで打者を打ち取ることはできます。ブルペン映えではなく、ゲームのなかでよさを出していくピッチャーだと考えています」

 この言葉を聞いて、濱岡が不調だった藤沢翔陵戦で完封勝利を収められた理由がわかったような気がした。

 濱岡が進学ではなく、プロに進みたい意向を示していることに対しても、平野監督は「なりたい自分になることを大事にしたい」と背中を押している。

「いい大学からオファーがあるなら、行かしてやるのも大事なんじゃない? とも言われます。でも、濱岡は『プロになりたい』という強い思いがあって、自分が一番伸びる場所だと信じています。名前のある大学になびくのではなく、自分が成長できる場所を誠実に選択している。ご両親も『大学で勉強するのはいつでもできる』と本人の意向を尊重しています。彼は人生を選択するうえで『つぶしがきくから』とか、そういうことは一切考えていないですよ」

 プロ入りするために、スピードや球質を磨く。大学でワンクッションを置く。そうした選択を否定するわけではない。濱岡蒼太という野球選手を唯一無二の最高傑作に仕上げるため、本人は最適な道を探し続け、周囲はサポートを惜しまない。

 川和の次戦は4月19日、21世紀枠でセンバツに出場した横浜清陵との対戦になる。川和が勝てば勝つほど、「ゲームのなかでよさを出していく」濱岡の持ち味は、スカウト陣の間で浸透していくに違いない。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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