【ドラフト2024】12球団から調査書! 神戸弘陵・村上泰斗の火の玉ストレートの秘密にラプソードのデータで迫る (3ページ目)

  • 落合初春●文 text by Ochiai Motoharu

【脱力のスイッチを入れたカットボール】

 2年春にようやく公式戦デビューを果たすと、6月には152キロを計測。しかし、夏の兵庫大会では5回戦で坂井陽翔(現・楽天)を擁する滝川二に敗れてしまう。

「ストレートは速いですが、抜け球も引っかかりも多くて、ただ速いだけ。練習試合でも4〜5回で100球ぐらい使うし、常に力んでましたね」

 岡本監督の懸念は「力み」だった。当時の村上は確かにストレートは速かったが、コントロールがバラつき、突然の乱調も多かった。カーブやチェンジアップなどの変化球の筋が良かったのである程度は抑えられてはいたが、いざとなったらストレートが入らない。典型的な「振らなきゃ勝てる」投手になりかけていた

 夏の敗戦後、岡本監督が提案したのはカットボールの習得だった。

「本音はストレートを抑えろと言いたかったですが、スピードという村上の良さを消しかねない。そこで滝二の坂井のカットボールを引き合いに出して、ああいう『楽できる球』があればええなと話しました」

 もともと器用な村上はすぐにカットボールを習得。徐々に楽をする投球術を身につけていったが、秋も兵庫県大会3回戦で敗退。この時点ではドラフト上位は夢のまた夢だった。

【最後の調整で無敵の好投手に】

「終わったと思いました」

 3年春の練習試合解禁日。10球団のスカウトが集まるなか、報徳学園を相手に制球を乱して3回4失点。3年生となった村上の初戦は散々な内容だった。

「正直、今朝丸に勝ちたい、報徳に勝ちたい、いいところを見せたいと思って力みまくりました」

 村上は2年時から常々、「兵庫県でナンバーワンの投手になりたい」と目標を語っていた。すでに甲子園でも結果を残し、ドラフト上位候補に名を連ねていた今朝丸裕喜との投げ合いで悪い部分が出てしまったのだ。

「今朝丸とえらい差がついてしもたなぁ」

 岡本監督は試合後、村上にそう告げた。発破をかけるというよりは「ホンマに思ったから言った」。村上はこの日を境にあらためて、「脱力」を意識するようになった。

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