夏の甲子園の裏で開催されたもうひとつの高校野球 「リーガ・サマーキャンプ」って何だ⁉︎
夏の甲子園が開催されていた頃、北海道では地方大会で敗れた高校3年生たちが、別の舞台で腕を競い合っていた。「予選で負けたら引退というあり方でいいのか」と、一般社団法人『ジャパン・ベースボール・イノベーション』の阪長友仁代表が既存の高校野球の仕組みに疑問を抱き、今夏初開催した『リーガ・サマーキャンプ』だ。
今夏初開催のリーガ・サマーキャンプには52人の選手が参加した photo by Nakajima Daisukeこの記事に関連する写真を見る
【プロ注目のドラフト候補も参加】
参加費26万9500円を払ってエントリーしたのは52人(3人は甲子園出場により辞退)。"ファーストペンギン"のひとりとなった左腕投手の横田心大(甲南)は参加動機をこう話した。
「次のステージへの架け橋になるので、めちゃくちゃいい機会だと思いました。自分と違う地域の選手もいっぱいいて、レベルも知れる。今回参加した田上航くん(八幡商業)、澁谷純希くん(帯広農業)はすごくいいピッチャーで、負けられないと刺激を受けました」
ドラフト候補の田上や澁谷らの視察でNPBやMLBのスカウトも訪れたなか、試合は8月9日から栗山町民球場で4チームに分かれてそれぞれリーグ戦6試合とプレーオフが行なわれ、最終日の同17日にはエスコンフィールドでファイナルが開催された。
横田のように大学で野球を続ける者が実戦機会を求めて参加した一方、強豪校で一度もベンチ入りできず不完全燃焼に終わった選手など、エントリーの動機は多岐にわたった。
「野球ってこんなに楽しかったんや!」
参加者が球場から宿舎へのバスで思わず漏らしたという今回の取り組みには、既存の高校野球と異なる仕組みが多く見られた。
最たる点が、リーグ戦で開催されたことだ。桐蔭学園に在籍し、強豪大学への進学が決まっている若井勇輝はこう話した。
「負けても"次"があるのが、高校野球との一番の違いです。プレッシャーがかかって小さいプレーになることは少ないですね。かつ、(リーグ戦の上位2チームだけが)エスコンでファイナルをできるという目標があるので、勝ちに向かって野球をするのが一番面白いところです」
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著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。