夏の甲子園優勝予想 気鋭の記者5人が占う波乱の大会の行方 神奈川県勢連覇? 青森県勢初優勝? (3ページ目)

元永知宏氏(ライター)
優勝予想:東海大相模

 大会前の優勝校予想は早稲田実業(西東京)で、「プラスアルファがない限り、夏の甲子園で頂点に立つことはできない」と書いた。チームの完成度よりも伸びしろを買って、優勝候補筆頭に挙げたのだが、彼らは想像以上に甲子園で強さを増していった。

 1回戦で鳴門渦潮(徳島)を8対4で下し、2回戦で鶴岡東(山形)を相手に、和泉実監督が「今までこんな展開は一回もない」と驚いた投手戦を展開したうえで延長サヨナラ勝ち。2年生エースの中村心大の鬼気迫る投球を見て、「もしかしたら」の思いを強くした。しかし、その早稲田実業は3回戦で延長タイブレークの末に大社(島根)に敗れた。

 大社もまた、甲子園という大舞台で一戦ごとに強くなっているチームだ。しかし、日本一になるまでには、あと3試合に勝たなければいけない。いくらエースの馬庭優太の勝利への想いが強くても、これまで3試合連続完投、401球を投げた投手が勝ち上がるのは容易ではない。

 ここ数年、筆者は優勝候補として広陵(広島)を推すことが多かった。1年生の春から伝統校の背番号1を背負うエースの高尾響、捕手の只石貫太というバッテリーがいて、小技を使える脇役が充実しているからだ。初めての夏の日本一を目指した広陵に8対1で圧勝したのが東海大相模(神奈川)だった。

 身長198センチのエース・藤田琉生は140キロ台後半のストレートにカーブ、チェンジアップなどを織り交ぜ、粘りのある広陵打線を寄せつけなかった。今大会は13回を投げて自責点0(失点1)、2試合の投球数は201球だ。まだまだ余力があるし、修羅場をくぐることで大化けする可能性がある。

 彼を盛り立てる守備の確実性、アグレッシブさは広陵戦で証明された。とくに、強烈なゴロを難なくさばいた内野陣はまったく危なげがない。好投手の高尾を打ち崩した打者たちのチャンスでの集中力と、果敢な走塁も見事だ。投手戦、打撃戦のどちらにも対応できる総合力がある。昨年の慶應義塾に続いて(関東勢としては4季連続)、神奈川代表が頂点に立つことになるかもしれない。

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