夏の甲子園で見つけた逸材! 青森山田の遊撃手・吉川勇大の「脱力プレー」のなかに潜む無限の可能性 (2ページ目)
【これからの伸びしろに期待大】
一見、軽く見られがちだが、攻守交代の際、いち早くショートのポジションにつき、荒れた地面をスパイクで丁寧にならしている姿を見ると、守備に対する思いが伝わってくるし、投手がボールを投げるたび打者のインパクトに合わせて一歩目の準備を怠らないあたりは、すばらしい遊撃手だと思う。
やるべきことをしっかりやっている選手だけに、出力全開のプレーに出会って、彼をベタ褒めしてみたい。これはずっと思っていたことだ。
「自分のこと、うまいと思っているんじゃないですか......」
ある記者仲間が、吉川についてそう表現した。
こういう選手が、たとえばプロ野球のような自分よりうまい選手がたくさんいる世界でプレーした時、はたしてどんな変化を見せてくれるのか? 「ヤバい!」と思って、がむしゃらに本気を出し、隠し持っていた才能を発揮するのか。それとも心がポキッ折れて、そのまま終わってしまうのか。
長野日大戦の試合のあと、失礼を承知で本人にどっちなのか聞いてみた。
「前のほうです」
そう言葉少なく答えてくれた吉川の目が、怒っているように見えた。彼のようなタイプの選手は、レベルの高いところに放り込めば、きっと恐ろしいスピードで成長していくのではないか。吉川は高校からプロも考えているという。だからこそ、もっとがむしゃらにアピールしてほしいとも思う。
彼の本当の才能はまだまだこんなものじゃないと思っているひとりとして、吉川のプレーにはこれからも注目していきたいと思っている。
著者プロフィール
安倍昌彦 (あべ・まさひこ)
1955年、宮城県生まれ。早稲田大学高等学院野球部から、早稲田大学でも野球部に所属。雑誌『野球小僧』で「流しのブルペンキャッチャー」としてドラフト候補投手のボールを受ける活動を始める。著書に『スカウト』(日刊スポーツ出版社)『流しのブルペンキャッチャーの旅』(白夜書房)『若者が育つということ 監督と大学野球』(日刊スポーツ出版社)など。
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