【夏の甲子園】強豪復活を託された鶴岡東の佐藤俊監督 負け続けるなかで得られた「気づき」 (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro

 指導者にとって大事なことのひとつを、佐藤は「気づくこと」と言う。

「その生徒が、昨日と今日でどこが違うのか。そういった観察は相当しています。むしろ、それが仕事だと思っています。見るのは歩く姿や、表情とかですね。

 大学時代に身についたのは、人がわからないことに気づくこと。自分の力ではどうしようもないことがあるとわかったことも大きい。私はたくさん負けてきたので、生徒の背中にそっと手を当てて、支えられるような気がしています」

 高校野球の監督は広報担当の役目も負うが、できることなら目立ちたくないという。

「私ではなくて、生徒の写真やコメントを使ってほしい。彼らにとって、一生に1回しかないことかもしれないので」

 これまで、「人生にはレギュラーも補欠もない」という佐藤の方針で、"全員野球"を掲げて戦ってきた。高校野球の主役は選手たち。だから、「部員のひとりひとりが納得できる戦いをしたい」と佐藤は言う。

「監督は脇役でいいんです。野球をするのは生徒たちですから」

 大会9日目の8月15日、鶴岡東は名門・早稲田実業に挑む。

(文中敬称略)

著者プロフィール

  • 元永知宏

    元永知宏 (もとなが・ともひろ)

    1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長

フォトギャラリーを見る

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る