【夏の甲子園】7年前に感じた大阪桐蔭の「声」の強さ 敗れた興南の元ソフトバンク・島袋洋奨投手コーチが語った強力打線対策とは? (3ページ目)
【大阪桐蔭は守りから試合のリズムを作れるチーム】
興南戦で甲子園通算70勝を挙げた大阪桐蔭の西谷浩一監督は、こう試合を振り返った。
「今日は守り勝ち。バッテリーを含めて、守りからリズムを作れていたと思います。相手は足も絡めてくるので、そんな簡単には抑えられないと意識していました。シングルヒットはOK、9イニングでしっかりとやろう、と」
全国でトップクラスの投手を何人も揃え、走力も備えた強打者を並べる打線は、他校にとって脅威だろう。彼らを倒す方法など、簡単には見つからない。
興南のエース・田崎は、大阪桐蔭打線と対峙して何を思ったのか。沖縄大会で最速149キロを記録したサウスポーは言う。
「フォアボールや、ちょっとの投げミスがすぐに失点につながる怖さを知りました。沖縄大会とは打球の速さが全然違いました。特に印象に残っているのが、代打でレフト前ヒットを打たれたラマル(・ギービン・ラタナヤケ)選手。おそらく打ち損じだと思うんですけど、それでも、ものすごく打球が速くて......」
しかし、もちろん抑えられる可能性はある。
「変化球をアウトコース低めに集めることができて、バッターの胸元にストレートを投げられるコントロールが自分にあれば、抑えられなくはないのかなと思いました」(島袋コーチ)
こう語るのは、田崎を指導した島袋洋奨投手コーチ。2010年に興南を春夏連覇に導いたエースで、のちに中央大に進み、2014年のドラフト5位で福岡ソフトバンクホークスに入団(2019年に現役引退)したOBだ。
大阪桐蔭を抑えるためにはどうすればいいのか? 島袋コーチは言う。
「大阪桐蔭打線はスイングが鋭いし、バスターでもバットを引く動作が速い。沖縄では、これほどのレベルの相手と戦える機会はありません。
今日の田崎はボールが先行して、自分優位のピッチングができなかった。でも、ストライクで追い込めた時には抑えることができた。
甲子園常連校で実績のある高校なので、甘い球は打たれます。もちろん、相手の圧力を感じると思いますが、とにかくストライク先行で早めに追い込むことが大事ですね」
8月14日の第2試合で大阪桐蔭と対戦するのは、1回戦で強豪の明豊(大分)を下し、甲子園初勝利を挙げた小松大谷(石川)。石川大会決勝で、春のセンバツでベスト4に入った星稜を相手に完封勝ちしたエースの西川大智、明豊戦で3回無失点の好投を見せた竹本陽は、どんなピッチングを見せるのか。
著者プロフィール
元永知宏 (もとなが・ともひろ)
1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長
フォトギャラリーを見る
3 / 3