【夏の甲子園】7年前に感じた大阪桐蔭の「声」の強さ 敗れた興南の元ソフトバンク・島袋洋奨投手コーチが語った強力打線対策とは? (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro

【状況判断に優れた"野球頭がいい"集団】

 大阪桐蔭の選手たちの声を聞くと、技術やセンスだけで勝ち上がっているわけではないことがわかった。

 たとえば、ワンアウト3塁のピンチの場面。

「ゴロゴー、ゴロゴー」(ゴロを打ったら三塁ランナーがホームに突っ込むぞ)

「ボールいらん、ボールいらん」(バッターのタイミングが合ってないから勝負しろ)

 サインを出すキャッチャー、守備位置にいる内野手だけでなく、ベンチにいる控え選手からもそんな声が飛ぶ。その合間に「ナイスボール」「勝負、勝負!」という激励も飛び交う。

 逆に、チャンスで相手バッテリーのミス(ワイルドピッチやパスボール)が出た時は、「また(ミスが)あるよ」「次も(ワンバウンドが)くるぞ」と選手は口々に言う。そうすることによって、ランナーは次にミスが起こった時にすぐ反応ができるし、相手は「またミスをしたら......」と考えてしまう。

 選手たちが勝手なことを言えば当事者(守備の時は守っている選手、攻撃時ならバッターとランナー)は混乱するおそれがあるが、その指示は見事なまでに統一されていて、ブレがない。彼らの声を聞けば、状況判断に優れた"野球頭のいい"集団だということがよくわかる。大げさに言えば、監督が何人もいるような状態だ。

 もちろん、フェアグラウンドにいる選手だけでなく、ベンチにいる全員が1球ごとに集中する必要がある。場面ごとに相手がどんな仕掛けをするのか、注意すべきことは何なのかを考えなければならない。そのうえで、相手が嫌がる(プレッシャーを感じる)言葉を選ぶ。そんなチームは一朝一夕には、出来上がらない。

 あれから7年。1年ごとに選手が入れ替わるなかで、チームの完成度は上がっているように見える。

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