【夏の甲子園】東海大相模の2年生右腕・福田拓翔が抱く健大高崎の154キロ右腕・石垣元気へのライバル心 「絶対に負けたくない」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

【健大高崎の石垣元気にライバル心】

 そして、福田はただストレートの質が超高校級というだけではない。この日は縦に大きく割れるカーブと、130キロ台のハイスピードで曲がるスライダーが目を惹いた。とくにウイニングショットとして2三振を奪ったスライダーのキレは出色だった。

 木村は福田のスライダーについて、戦慄の証言をした。

「真っすぐに近い軌道から、バッターの近くで曲がってきます。真っすぐを待っているバッターからしたら、『消える』体感だと思いますよ」

 福田はさらなる武器を隠し持っている。この日は1球しか投げなかったフォークだ。おそらく長いイニングを投げる際には、猛威を奮うだろう。

 福田には強く意識する存在がいる。同じ2年生にして、今夏の甲子園で最速153キロを計測した石垣元気(健大高崎)だ。

「石垣は練習試合をした時に連絡先を交換して、お互いに意識し合っています。彼はとにかく球が速いのが魅力的です。もちろん球速だけじゃないんですけど、絶対に負けたくないですね」

 石垣の最高球速が154キロなのに対して、福田は150キロ。だが、球質にかけては勝っている自信があるのでは? そう尋ねると、福田は不敵に笑ってこう答えた。

「僕はそれよりも、ピンチに強いピッチングをできるのが長所だと思っています。そこだけは誰にも負けたくないですね」

 2025年のドラフト戦線は石垣と福田だけでなく、今大会ここまで未登板の大物・森陽樹(大阪桐蔭)などポテンシャルを秘めた逸材が多い。彼らのつばぜり合いが、向こう1年で世代全体のレベルを引き上げていく予感がする。

 これからどんな存在になっていきたいか。そう尋ねると、福田は淀みない口調でこう答えた。

「藤田さんみたいにチームを私生活から引っ張っていける存在になりたいです。あとは『勝てる投手』じゃないと評価されないと思うので、球速を意識しつつも『勝てる投手』になれるように追求していきたいです」

 兵庫・明石から神奈川・相模原へと渡った金の卵は、いずれ日本の宝になれるのか。東海大相模の次戦は8月16日、広陵(広島)との好カード。福田の登板はあるのか、楽しみは続く。

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プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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