和歌山南陵バスケ部が起こした奇跡 部員6人でインターハイ出場、「走らないバスケ」で日本一を目指す (2ページ目)
アブバカは身長205センチながらインサイドに強いだけでなく、ドライブで切り込むことも3ポイントシュートを放つことも得意なオールラウンダーだ。将来はNBAでプレーすることを目標にしている。チームメイトからは「イディ」の愛称で親しまれる。
そんなアブバカも、当初は日本でプレーすることは考えていなかったという。
「最初はオファーのあったアメリカに行きたかったんです。アメリカに行くまであと2カ月というところでコロナがあって、アメリカのビザがとれなくなってしまいました」
2学年上に和歌山南陵でプレーするアデチュチュ・デイビッド・アラバ(現・江戸川大)という先輩がいた縁もあり、アブバカは来日を決意する。
とはいえ、日本のバスケ界でいきなり活躍できたわけではない。和中監督は「最初は何もできず、使いものにならなかった」と振り返る。異国の地で言語、食事、文化の壁にぶつかり、寮の劣悪な住環境という和歌山南陵ならではの問題にもぶつかった。
アブバカに「ナイジェリアに帰りたいと思ったことはありますか?」と聞くと、日本語でこう返ってきた。
「けっこうありました。でも、帰ることができないから、我慢するしかない。家族に会いたかったけど、高校が終わったら帰ります」
コロナ禍という背景もあり、高校入学後は一度もナイジェリアに帰国していない。それでも、アブバカはストイックにバスケに打ち込んだ。和中監督は「真面目すぎるくらい真面目」と評価する。
「イディには『NBAに行く夢があるなら、こういうことができないとダメだよ』と伝えてきました。目標に向けて努力できる選手ですし、チームに対してすごく献身的。近畿で一番いい留学生と評価される選手に成長してくれました」
【劣悪な環境に寮から脱走】
一方、脱落の危機があったのは、シューターの紺野だった。雨が続くとトイレの天井から雨漏りがする寮に辟易としていた。
「寮があまりにも汚くてビックリして、1年生の時はやめたいと思っていました。寮から脱走したこともあります。親から『アカンやろ』と言われて戻ったんですけど」
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