大阪桐蔭時代は控えの外野手 国士舘大・山下来球はドラフト候補右腕が「天才っすね」と一目置く超逸材 (3ページ目)
まるで同期生のような親しげなやりとりに、思わず「年齢は1歳違いですよね?」と確認を入れた。すると、山下は「中学で同じチームだったんですよ」と教えてくれた。岩崎も山下も大阪の大淀ボーイズ出身だったのだ。山下の言葉を受けて、岩崎は「そうっす。だからナメてるんっすよ」と続けた。お互いに自宅が近所のため、自転車で一緒にグラウンドに通うこともあったという。
大淀ボーイズ出身のふたりの「コンビプレー」は、その後も続いた。
── ということは、幼なじみのようなものですね。
山下 岩崎さんを見て育ったんで......。
岩崎 いや、「岩崎さん」なんて呼んでないっすよ。
── 大淀ボーイズは、山下選手の代で全国優勝していますよね?
山下 そうですね。(岩崎を見て)弱かったんで......。
岩崎 おい!
山下 自分たちが「先輩の分まで......」と取り返した代です。
そして、山下はしみじみと「今日は楽しかったっすね。楽しかったなぁ〜」とつぶやいた。
せっかくの機会なので、岩崎にも「山下選手の成長をどう感じていますか?」と聞いてみた。すると、岩崎は真剣なトーンでこう答えた。
「こいつ、マジでいいっすよ。打球が違うっすもん。天才っすね」
最後に山下に「来年はプロを目指しますか?」と聞くと、「もう、行きます!」と即答された。そして山下は隣の岩崎に目をやり、「先に行って、待っといてね」と笑った。
岩崎が「行けるよ、おまえは〜」と励ますと、山下は「一緒のところに行こうね」と返す。大淀ボーイズ出身の名コンビは、最後までにこやかだった。
山下来球と岩崎峻典の熱い幼なじみ対決は、今秋のリーグ戦でも繰り広げられるのか。それとも、2部優勝の可能性を残す東洋大が1部に昇格して幻に終わるのか。いずれにしても、山下はその頃には今よりもレベルアップした姿を見せてくれるはずだ。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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