「清原和博、桑田真澄の1年生の起用は上級生の反発もすごかった」PL学園元監督の中村順司が明かすKKコンビ秘話【2023年人気記事】

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika

 2023年の日本はWBC優勝に始まり、バスケのW杯では48年ぶりに自力での五輪出場権を獲得、ラグビーのW杯でも奮闘を見せた。様々な世界大会が行なわれ、スポーツ界は大いなる盛り上がりを見せた。そんななか、スポルティーバではどんな記事が多くの方に読まれたのか。昨年、反響の大きかった人気記事を再公開します(2023年8月5日配信)。

※記事内容は配信日当時のものになります。

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元PL学園野球部監督・中村順司インタビュー前編(全3回)

 高校野球界に名を残した名将といえば、必ず思い浮かぶひとりがPL学園(大阪)監督を18年間務めた中村順司だろう。

「逆転のPL」と呼ばれ、数々の名シーンを甲子園の歴史に残したが、なかでも桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」がいた1983〜1985年の3年間は、5季連続甲子園出場という偉業を成し遂げた。まさにチームの黄金期だった。

 この頃、まだ30代だった中村監督。今年8月5日で77歳となったが、当時の記憶は今も鮮明だという。印象に残る試合を振り返りながら、思い出を語ってもらった。

PL学園で活躍しKKコンビと呼ばれた清原和博と桑田真澄 写真/AFLOPL学園で活躍しKKコンビと呼ばれた清原和博と桑田真澄 写真/AFLOこの記事に関連する写真を見る

●池田の水野雄仁に「憧れるのをやめましょう」

 桑田、清原のふたりがPL学園のスーパー1年生として衝撃のデビューを果たしたのが、1983年夏の甲子園、第65回大会である。背番号11の桑田がマウンドに上がり、背番号3の一塁手・清原が4番に座る。

 率いる中村はその3年前に監督に就任し、半年後の1981年センバツでいきなりの優勝を飾っていた。翌1982年春も制して大会2連覇を果たし、甲子園無敗のまま1983年に初めて夏の大会に臨んでいた。

「この年のPLは小柄な選手が多く、平均身長は171センチ。188センチの清原がひとりでその数字を上げてくれたようなものでしたよ。大阪大会でも苦戦しながら勝ち上がってきて、私は甲子園に出場できただけで上出来だと思っていた。だから大会前、選手には甲子園で一回は校歌を聞こうなと声をかけていたんです」

 その大会で人気、実力ともにナンバーワンと言われていたのが、蔦文也監督率いる池田高校(徳島)だった。エースに水野雄仁(元巨人)を擁し、パワフルな野球で甲子園を沸かせて夏春夏の3季連続優勝を狙っていた。

 その池田と、勝ち上がったPL学園は準決勝で顔を合わせる。下馬評では明らかに池田が有利。そこで中村監督は試合前、選手たちがちょっと驚くような言葉をかけた。

"水野はやっぱりすごかったと、たとえ負けても言うなよ"

「これまで池田と戦ったチームが、声をそろえて相手エースを称えていた。戦う前から、池田は強いと思い込んでいるのではないかと思ったんです。今年のWBCで大谷翔平が試合前に『(メジャーリーガーに)憧れるのをやめましょう』と仲間に言ったことが話題になりましたが、それに似たような思いがあったんですね。

 相手を上に見るな、同じ高校生なのだから対等な気持ちで戦おう。そして、(右打者が)右方向に打てといってもファウルになってカウントを稼がせるだけ。だったらインコースにきた球を思いきり引っ張ってやれとハッパをかけました。2回に桑田がインコースのボールを叩いてスタンドに運んだ時は、水野が信じられないという表情で悔しがっていたのが印象的でしたね」

 桑田の2ランに続いて次打者も連続ホームラン。終わってみれば7−0でPLが勝利し、桑田は5安打完封で投打にわたる活躍だった。池田の連覇の夢を打ち砕いたPLは、翌日の決勝戦でも横浜商(神奈川)を3−0で破り、大会前には考えもしていなかった優勝を勝ちとる。

甲子園やKKコンビの思い出を語る中村順司 写真/スポルティーバ甲子園やKKコンビの思い出を語る中村順司 写真/スポルティーバこの記事に関連する写真を見る

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プロフィール

  • 藤井利香

    藤井利香 (ふじい・りか)

    フリーライター。東京都出身。ラグビー専門誌の編集部を経て、独立。高校野球、プロ野球、バレーボールなどスポーツ関連の取材をする一方で、芸能人から一般人までさまざまな分野で生きる人々を多数取材。著書に指導者にスポットを当てた『監督と甲子園』シリーズ、『幻のバイブル』『小山台野球班の記録』(いずれも日刊スポーツ出版社)など。帝京高野球部名誉監督の前田三夫氏の著書『鬼軍曹の歩いた道』(ごま書房新書)では、編集・構成を担当している。

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