佐々木麟太郎のアメリカ留学はMLBを目指す上でプラス要素 バスケットボールに続きトップ選手の選択肢になるか (4ページ目)
【選手、人間としても成長を目指す】
学生選手にとってNILの魅力は金銭面だけでなく、学生の時から自己ブランドを確立できる点にもある。
日本の大学とは異なり、アメリカでは大学生でも収入を得られるようになったが、それは佐々木にとってアメリカ留学を選んだ大きな理由ではない。本人が「野球選手としてはまだまだ未熟で、さらに上を目指せるような位置から練習していきたい」と言うように、上(MLB)を目指した時に、アメリカの強豪大学に進む道が最も堅実だと判断したから、プロ野球ドラフトの1巡目候補者としてはまだ誰も進んだことのない道を選んだはずだ。
アメリカの強豪大学はメジャー球団並の豪華施設を誇るチームも多く、アメリカの高校生でもドラフト指名を蹴って、大学進学を選ぶ選手は多い。特に下位指名の高校生は、安い契約金でプロ契約してマイナーの厳しい環境で過ごすよりも、練習環境が充実した大学で技術を磨き、3、4年後に上位指名を受けて、多額の契約金を手にするケースが目立つ。また、最近は大学で鍛えられた上位指名選手がマイナーで過ごす時間が短くなっており、ドラフトから2、3年後にはメジャーに昇格する選手も少なくない。
また、アメリカの大学ではスポーツだけをしていれば許される訳ではなく、文武両道が求められる。成績が一定レベルに達しなければ、練習や試合に出る権利も失ってしまう。大学側も学生選手が規定以上の成績を取れるように、家庭教師を用意したりして、十分なサポート体制を用意している。特にバンダービルト大学は野球の強豪なだけでなく、学業面でもアメリカでトップレベルとして知られている。
そんな環境で、野球だけでなく学問にも取り組んでいけば、「広い世界で学んでいきたい」と言う佐々木の希望も叶えられる。バンダービルト大学を卒業すれば、社会人としての成功切符も手にしたも同然だ。父の佐々木洋監督も「野球のことだけを考えるのではなく、人生のあらゆる可能性を広げて、教養もつけながら次のステージを目指すのもいいのかなと思った。野球だけでなく、人間として幅を広げてほしい」と息子のアメリカ留学を後押しする。
メジャーリーグを目指す上で、アメリカの大学で英語を身に着け、アメリカの野球文化を体感しながら学んでいくことは大きなプラス要素となる。
NBA(米プロ・バスケットボール)では八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)と渡邊雄太(フェニックス・サンズ)の2人の日本人選手がプレーしているが、2人とも日本の高校を卒業後に、日本の大学ではなく、アメリカの大学でのプレーを選んだ。アメリカの大学でプレーしたことで、アメリカのバスケットボール・スタイルに慣れ、アメリカのバスケットボール界で生き延びていく術を身に着けた。
「誰もやったことがないことをやりたい」と口にして、有言実行したのは花巻東高校の先輩に当たる大谷だが、佐々木もまた大谷と同じ気持ちを持って渡米するはずだ。
佐々木が成功すれば、バスケットボールに続いて、野球でもアメリカの大学進学を選ぶトップ選手が増えそうだ。
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