共栄学園が甲子園出場を果たした背景にある「画期的練習法」 専用グラウンドがなくても大丈夫 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 基本的に甲子園を目指す強豪校は、専用グラウンドを有している。原田監督は帝京や修徳、関東第一など同地区の強豪校を見渡し、「あそこは専用球場がある」「うちもフェンスがほしい」とうらやましく思っていた。

 ところが、トレーニングに特化してから考え方が180度変わった。

「うちの学校にはトレーニングルームも食堂もある。逆に、野球の練習なしの日をつくるのは、立派なグラウンドを持っているチームにはできないだろうと考えるようになりました」

 トレーニングの日は放課後の4時頃から6時頃まで。筋量や瞬発力を高めるメニューと柔軟を実施する。終了後は学食に行き、700グラムの白米をおかずと一緒に食べてから帰宅する。最初はサバの缶詰など栄養重視でおかずを用意したが、業者に頼み、白米が進みやすいメニューに変えてもらった。

"食トレ"は高校野球で広まったが、賛否両論が尽きない。前提として体を大きくするには栄養摂取が不可欠になるが、食事の中身やトレーニングとどのように組み合わせるかもポイントだ。

「本気でトレーニングをやったらフラフラになって、野球の練習をするよりもはるかにきつい。日本の野球界は、まだそのことを理解していない」

 オリックスの山岡泰輔や杉本裕太郎などのトレーナーを務める高島誠氏のオンラインサロンで、アメリカの大学や独立リーグで投手としてプレー経験のある赤沼淳平氏が話していた内容が原田監督の印象に強く残った。日本の野球チームはグラウンドでの練習に重きを置く傾向にあるが、アメリカではトレーニングを効果的に取り入れているというのだ。

 共栄学園では、昨年の秋以前から朝練で1時間ほどウエイトトレーニングをしていたが、原田監督は「いま思えば意味がなかった」と振り返る。空いた時間に筋トレをしているという程度で、片手間だったからだ。

「ガンガンやろうぜ!」

 ノリのいい音楽とともに原田監督が前向きな声をかけると、選手たちは精力的に取り組み続けた。共栄学園では合理的に肉体改造に励んだ結果、チームの平均体重は今夏の甲子園出場49校中5位タイの76.3キロを記録するまでになった。

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