仙台育英・尾形樹人が持つ無形の財産「世代ナンバーワン」より「勝てる捕手」を目指す

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 尾形樹人(みきと)は「高校ナンバーワン捕手」を狙える存在なのではないか。仙台育英の試合を見るたびに、そう思っている。

 身長181センチ、体重84キロの体躯に、低い軌道で伸びていく二塁送球。昨夏は2年生にして甲子園優勝捕手に輝いた。ただし、チーム内には投手陣を中心にタレントがひしめき、尾形が下位打順を打っていることもあって注目度はさほど高くない。

初戦の浦和学院戦で2ランを含む3安打を放った仙台育英の尾形樹人初戦の浦和学院戦で2ランを含む3安打を放った仙台育英の尾形樹人この記事に関連する写真を見る 4月に開かれたU−18日本代表候補強化合宿で目立っていた捕手は、ともに強肩を武器にする堀柊那(しゅうな/報徳学園)と鈴木叶(きょう/常葉大菊川)のふたりだった。だが、合宿未招集の尾形だって守備力は彼らと遜色ないどころか、経験値を含めれば上回っている部分もあるだろう。

 ただし、尾形本人にとっては堀という壁は高く感じていたようだ。仙台育英は今春のセンバツ準々決勝で、堀を擁する報徳学園に延長10回タイブレークの末に4対5でサヨナラ負けしている。

「堀くんとは2月くらいから連絡をとり合ってライバル視していたんですけど、対戦してみて今の自分のレベルでは追い越せないと感じました。夏までに攻守にバランスを上げないといけないなと」

 尾形が感じた堀のすごさとは何か。そう尋ねると、尾形ははにかみながら答えた。

「スローイングはもちろんなんですけど、関西人特有の強気な姿勢というか、『オレが引っ張ってやる』という感じが格好いいですね」

【浦和学院戦で2ランを含む3安打】

 そして今夏、尾形は言葉どおり攻守にスケールアップした姿を見せる。

 8月6日の浦和学院との1回戦は19対9という乱戦になったが、尾形は高校通算16号となる2ラン本塁打を含む3安打3打点と活躍。コンスタントに強い打球を打てるようになっており、鮮烈な印象を残した。

 尾形は宮城大会決勝でも4安打6打点と固め打ちを見せている。6月の東北大会決勝で八戸学院光星に2対3で敗れたあと、仙台育英はチーム全体の課題である打撃面を強化するため徹底的に振り込んだ時期があった。数週間にわたり、練習は打撃のみ。そこで尾形は自分の形をつかんだという。

「バッティングはとにかく(重心を)後ろに残して、ためたものをそのままぶつけるイメージです」

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著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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