高校球界は空前の「盛り上がりが足りないブーム」だが、聖光学院は採用せず「男の勲章」を貫くワケ (2ページ目)
開幕日の第3試合に登場した仙台育英は、宮城大会では一体感のある「盛り上がりが足りない!」を披露していた。ところが、甲子園初戦(浦和学院戦)ではその機会は訪れなかった。試合序盤から打線が爆発し、その後は浦和学院に猛追を許すスリリングな展開に「盛り上がり」が足りていたのかもしれない。
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【聖光学院の名物応援といえば...】
そんななか、盛り上がり不足とは無縁のチームがあった。福島のリアル男塾・聖光学院である。
聖光学院の名物応援といえば、野太い声で歌い上げる『男の勲章』。たとえ吹奏楽部の演奏がない日でも、100人を超える通称「口ラッパ隊」はアカペラで男臭く突っ張ってみせる。
吹奏楽部の演奏に頼らない「盛り上がりが足りない!」と聖光学院の口ラッパ隊は、相性がいいように思える。だが、いくら試合が進もうと、聖光学院のアルプススタンドから「盛り上がり不足」を指摘する声は起きなかった。
私は恐る恐る、聖光学院の口ラッパ隊に聞いてみた。「聖光学院では、『盛り上がりが足りない!』はやらないのでしょうか?」と。
「ウチではやりません」
そう断言したのは、応援団の副団長を務める小林響樹(3年)だ。なぜ、聖光学院では取り入れないのか。そう問うと、小林副団長から意外な答えが返ってきた。
「春から夏にかけて『盛り上がりが足りない』が流行っていましたけど、その応援をやっていたチームが負けている傾向にあったので......」
これは常勝チームゆえの「ジンクス」かもしれない。高校野球では、優勝チーム以外はすべて「敗者」になる。つまり、「盛り上がりが足りない!」を取り入れるチームが多ければ多いほど、「負けたチームの応援」という見方もできる。
そして、小林副団長は神妙な表情でこう続けた。
「自分たちには、この応援が格好いいとは思えなかったんです」
選手たちで話し合い、最終的に今夏の導入を見送ることにしたという。小林副団長の語った「自分たちには」という前置きには、「他校の応援スタイルを否定したくない」という思いが滲んでいた。
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