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アマ球界の名将が噛みしめる「教える喜び」率いる新興の大学で無名の選手が急成長 (3ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 写真●野球部提供

野球部を指導する高橋広監督(写真左)と道方康友コーチ野球部を指導する高橋広監督(写真左)と道方康友コーチこの記事に関連する写真を見る ちなみに、道方コーチは早稲田大野球部で高橋監督の1学年下で、東京六大学リーグ通算20勝5敗の左腕だった。小柄でもストレートとカーブ、チェンジアップとの緩急を武器に「早稲田のエース」をまっとうした。JFE東日本の監督を辞してから、新興の大学チームのコーチとして高橋監督を支えている。

「148、9(キロ)までは出てるんや。あと一歩で150をクリアできるんやけどな......。まだ粗いところもあるけど、投げるパワーなら一番や」

 道方コーチの前でピッチングをしているのは、牟田稔啓(むた・じんけい/福岡・香椎高)という投手だ。

「えっ、香椎高校の牟田......」

 聞き覚えのある名前だったので、すぐ思い出した。九州の高校野球に詳しいライターの方が、香椎高校当時の牟田を無名の逸材として地元紙のコラムで取り上げていた。

 均整抜群の体格から豪快に投げおろし、リリースのタイミングが合った時のストレートは、ホームベース手前からうなりを上げてくる。この日は"ラプソード"という機械を使って、球速、回転数など、ボールのさまざまな成分を計測していた。

 この日のストレートの回転数は、2700台が立て続けに表示された。プロの一軍クラスで2300〜2400と言われており、それをはるかに超えている。多少、スライダー回転が加わった"真っスラ系"の球質を含んでいるのもあるかもしれないが、それでも驚く数字であることに違いはない。

「最初は頭が突っ込んで上体だけで投げていたのを、道方が下半身から始動するフォームを教えてくれて、グングンよくなってきた。ほんと、道方のおかげでピッチャー陣がよくなって、この春は勝たせてもらったようなものです」(高橋監督)

【目標は一部昇格と神宮】

 その一方で、150人近い部員を束ねてきたのが、主将の中島陸玖(りく/生光学園)だ。50m5秒台の快足を武器にセンターを守り、打つほうでも打線の上位を担っている。

「部員も多いし、いろいろなレベルの高校から集まったチームなんで、無理して全体をガッチリ合わせるより、自主性というか、個人の意欲や考え方を尊重しながらやっています」

 平日の練習は、朝、昼・夜の三部制。授業優先のため、中島主将がグラウンドにいない時もあるが、各学年に責任者を定めて報告するようにしている。

「上級生が少ない練習の時は、どうしてもダラダラすることがあるので、そういう時は厳しく」

 高橋監督はそう語るが、決して頭ごなしには言わない。

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