「医師か、プロ野球か」悩めるドラフト候補、三重・高田高校の中山勝暁が心境を吐露 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

「中高一貫の子はほとんど高校で部活に入らず勉強に専念するので、僕も野球は中学でやめるつもりでした」

 そんな中山に目を留める人物がいた。木本、久居などで高校野球の監督を務め、三重県内で名伯楽と知られる松崎敏祐さんだ。松崎さんは「伸びしろがある」と中山を評価し、高校野球でのプレー継続を勧めた。中山は「ちょっとやってみようかな」と思い直し、高田高校の硬式野球部に入部する。

【最速147キロをマーク】

 高田高校の硬式野球部に所属する選手は、中山以外は高校から進学した3年制の生徒たち。稲垣監督によると、高田中学から硬式野球部に入部した生徒は「5年ぶり」だという。母親からは「勉強はやっていけるの?」と心配されたが、中山は「勉強も野球も両方頑張りたい」と意志を伝えて許しを得た。

 入部して球速を計ると、いきなり133キロが出た。中学までは「何の意識もなく、やりたいようになっていた」という中山だが、高校では稲垣監督にスローイングの基礎を教わりめきめきと上達していった。

 稲垣監督は、冬場のトレーニング期間中に驚いたことがあったという。

「同じメニューをこなしているはずなのに、明らかに中山だけ筋肉のつき方がいいんです。個人でトレーニングしているのかと聞いたら、『家でゴロゴロしてます』と言っていました」

 その点を本人に聞いてみると、中山は独自の考え方を語り始めた。

「どうせ厳しいトレーニングをするなら、正しいやり方で毎回『自分に勝てるか?』と考えながら取り組んでいました。やらないといけないのは変わらないなら、最大の効果を得てやろうと思っていたんです」

 今では身長178センチ、体重82キロとたくましい体つきになり、2年秋に146キロ、そしてこの春に最速147キロをマークした。キャッチボール中に山本由伸(オリックス)の投球フォームを取り入れるなど、絶えず自分の理想の投球フォームを探求している。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る