2023年ドラフト戦線の隠れた実力派 150キロ左腕の桐蔭横浜大・古謝樹は、球速よりも「球質」で勝負する (3ページ目)
このまま故障さえなければ、大学生左腕として細野晴希に次ぐ評価を受けても不思議ではない。齊藤監督に「どこに出しても恥ずかしくない投手ではないですか?」と尋ねると、首をかしげた齊藤監督からこんな反応が返ってきた。
「私の欲目かもしれませんが、あいつの本当にいい時を見ているので......。『もっといけるんじゃないか?』と思ってしまうんですよね。力感なく投げられて、真っすぐの質は本当にいい。でも、本来はもっとコントロールのいい子なんですよ。オープン戦では東都や社会人の強豪も抑えていましたから」
春のオープン戦では、Hondaを5回無失点、SUBARUと國學院大を5回1失点と抑えている。SUBARU戦は被安打1の無双ぶりだったという。
今年のドラフト候補に左投手が多いことは、古謝も認識している。だが、彼らへの対抗意識を聞いても、威勢のいい言葉は聞かれなかった。
「心のなかでは負けたくないと思ってるんですけど、比べてしまうと浮足立って空回りしてしまうので。自分は自分ですし、ダメならダメ、よかったらよいで評価してもらえると思います。だからほかの人のことはライバルではなく、アバウトにとらえたいです」
いずれグラブの色で自己主張せずとも、古謝樹が脚光を浴びる日はきっと訪れる。そのストレートは、誰よりも見る者の心を打ち抜くだけの魅力がある。
著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。
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