チャンスを逃して東邦の監督は「ごめん!俺のせいだ」→選手たちに笑い ベンチの雰囲気が窮地を救うファインプレーも生んだ (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 大友良行●撮影 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この場面を大島はこう振り返る。

「7回のエラーは二塁ランナーと打球が重なって、ボールを見ずに止まって捕ったので、足を使えずに上体で投げてしまって......ベンチに戻ってから、みんなに『気にするな』『まだ勝ってるから』と励まされました。消極的になってはいけないと思って、自分から声を出すようにしていました」

 まさか、次の回に同じような場面で打球が飛んでくるとは思っていなかっただろう。だが、大島は冷静だった。

「逆シングルで捕って、ステップしたら間に合わないと思ったんで、ファーストも見ないで投げました。適当に投げたらあそこにいってくれたという感じです(笑)。練習ではできないプレーですね。気づいたら、アウトになっていました」

 このプレーで流れは東邦に傾いた。9回表に1点を追加し、山田監督に2勝目をプレゼントした。大島は言う。

「7回にエラーして、ちょっと気持ちがダウンしてたんですけど、あのプレーで乗れました。先輩たちがベンチで『よくやってくれた』ってめちゃくちゃほめてくれたんで、幸せだなと感じました。監督には『あのプレーは3点分の価値があるぞ』って言われてうれしかったです」

 1回戦の鳥取城北戦(鳥取)では、緊張をほぐすために「エラー3つまでOK」と言った東邦の山田監督だが、この日は、「エラーは3つまでOKだけど、(背番号10の)山北が先発なんで、『ふたつまでにしようか?』と言いました」と笑った。

「大島は、本当によく守ってくれました。7回にいい送球ができなかったのでどうなるかなと思ったんですが、ミスを引きずることなく、いいプレーをしてくれました。ああいう局面であのプレーを出せるっていうのは、心が強くなったという証拠だなと思います」

 2試合続けて接戦をモノにした東邦は3月28日、3回戦で報徳学園(兵庫)と対戦する。「まだ強いのか弱いのかわかりません」と山田監督は言うが、この大会の台風の目になりそうな予感がする。

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