部員13人の城東が68人の東海大菅生に善戦 甲子園初の女子ノッカーの役割が「すごく大きかった」

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by 東京スポーツ/アフロ

 高校野球の「リアル」がそこにはあった。

 筆者は4年間、愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(愛媛新聞社)の編集長を務めたが、そこで目の当たりにしたのは、高校野球の二極化だ。

 部員が100人を超える強豪私立高校がある一方で、試合に必要な9人を集めることさえ困難で、他校と合同チームを組まないと大会に出ることができない高校もある。公式戦で、登録メンバーが埋まらない野球部は珍しくない。

 21世紀枠で選ばれた城東(徳島)の部員は13人。この人数では、紅白戦やシートバッティングなどの実戦練習はできない。ハンデであることは間違いないだろう。

甲子園初の女子ノッカーとして話題になった城東の永野悠菜甲子園初の女子ノッカーとして話題になった城東の永野悠菜この記事に関連する写真を見る 春のセンバツ5日目に城東が対戦したのは、秋季東京都大会を制した東海大菅生(東京)だった。東海大菅生の部員数は68人(マネージャー4人を含む)。両翼92m、中堅115mの専用グラウンドに加えて、合宿所の隣には全面人工芝の室内練習場もある。

 秋季徳島県大会で準決勝まで進み、3位決定戦で敗れた城東の実力は評価されているが、東京王者が相手では分が悪いと思われた。

 先取点を奪ったのは城東だった。初回に先発の宮本恭佑を攻めて、2安打で1得点。その裏に同点にされたが、すぐに1点をとり返した。しかし、3回裏に3点をとられて逆転を許し、2対5で敗れた。

 試合後、城東の新治良佑監督は開口一番、こう言った。

「13人という少ない部員でこの最高の舞台に立ち、東京チャンピオンという最高のチームと試合をさせてもらい、選手たちはふだん以上の力を発揮できました。選手たちには『楽しかった』という気持ちと、悔しくて『もう1回甲子園に来たい』という気持ちがあると思う。本当に幸せな時間でした」

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