北海道の無名左腕が一躍ドラフト上位候補に。星槎道都大・滝田一希が亡き母に誓う「全国大会での活躍とプロ入り」
今年の夏、北海道でひとりの大学生が野球界に大きな衝撃を与えた。三軍とはいえ、NPBトップの選手層を誇るソフトバンクを相手に6回まで10三振を奪い、わずか2安打で無失点に抑えたからだ。この日、ストレートは最速151キロを記録し、チェンジアップやスプリットなども交えて、ソフトバンクの有望株たちをねじ伏せた。
8月に避暑地である北海道釧路市などにプロ・アマ計16チームが集い行なわれる『タンチョウリーグ』。ここで一躍注目の的となったのが、星槎道都大の左腕・滝田一希だ。
最速151キロを誇る星槎道都大の左腕・滝田一希この記事に関連する写真を見る
【無名校で孤軍奮闘の活躍】
全校生徒がわずか80人ちょっとの寿都(すっつ)高校の出身で、3年間いずれも支部大会で敗退し、一度も道大会には進めなかった。滝田も「公式戦は2、3回しか勝った記憶がありません」と話すほどだ。
それが今や「ドラフト上位指名もあるのでは?」と囁かれるほどの逸材になったのには、恩返しへの強い思いがあった。
滝田は2001年12月28日に北海道黒松内町(くろまつないちょう)で、6人兄弟の5番目(三男)として産まれた。6歳の頃に両親が離婚し、それからは女手ひとつで母・美智子さんに育てられた。
兄の影響で野球を始めたが、中学まではそこまで目立つ選手ではなかったため、高校はどこからも誘いがなく、隣町の寿都高校へ進学した。
そこではエース、1番打者、主将と孤軍奮闘。さらに身長183センチという恵まれた体格もあり、かつて中日の一軍外野守備・走塁コーチやDeNAの二軍監督などを務めた経験のある星槎道都大の二宮至監督の目に留まった。
「その日は春の小樽支部大会で、前の年に甲子園に出ていた北照高校を見に行ったんです。そしたらその相手が寿都高校で。その時、滝田は身長の高い左投手で、1番打者を務めるなど足の速さもありました。球の速さというより、そこに可能性を感じました」
しかし、大学進学にあたりネックとなったのが金銭面だった。たとえ特待生になったからといっても、野球をするにはある程度のお金がかかる。家族のことも考え、当初は就職を考えていた滝田だったが、二宮監督もあきらめずに高校に通い、何度も説得した。
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