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北海道の無名左腕が一躍ドラフト上位候補に。星槎道都大・滝田一希が亡き母に誓う「全国大会での活躍とプロ入り」 (2ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 最終的には美智子さんが「これから頑張っていく気持ちがあるならいいよ」と背中を押してくれたことで、大学進学が決まった。

【ここで終わったらダメだ】

 大学に入ってからは、母への恩返しの気持ちが滝田の成長を強く後押しした。1年秋からリーグ戦での登板を果たし、今年春は開幕投手として初先発。母に活躍する姿を、これからもっと見せるはずだった......。

 しかし5月に美智子さんが心筋梗塞で急死。「野球どころではなくなってしまいました」と、リーグ戦途中にチームから離脱。その間、野球と大学を辞めることを本気で考えていたという。

 それでも支えになったのは、やはり母への感謝の気持ちだった。金銭面も姉たちの援助や奨学金によって工面できることになった。

「3年間、母のためにやってきたので『ここで終わったらダメだ』という気持ちになりました。野球を再開するにあたってはいろんな人に支えてもらいましたし、(同期の)伊東佳希の投げている姿を見て、『あのマウンドに立ちたい。一緒に野球がしたい』と思って、続けられました」

 悲しみを乗り越え練習に励み、成果となって表れたのがソフトバンク戦での快投だった。

 そして今年は、最後にもうひとつ大きな刺激を受けた。それが12月に愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで行なわれた侍ジャパン大学代表候補選手強化合宿だ。各地から44人の精鋭が集まるなか、滝田は北海道の大学から唯一選出された。これまで地域の選抜チームすら選ばれたことのなかった滝田は、全国の猛者たちと初めて一緒にプレーする機会を得た。

 見せ場は、いきなり初日に用意された。本来、紅白戦は合宿2日目と3日目に行なわれる予定だったが、3日目が雨予報だったため急遽予定が変更。移動したその日に登板というハードなスケジュールを強いられたが、滝田は持ち味を発揮する。

「思ったより体も動いて、感覚よく投げられました」と、2イニングを投げて許した安打は1本のみ。気温が低かったにもかかわらず、最速は149キロをマークした。球速は、早くから来秋のドラフト1位候補と称されている細野晴希(東洋大)と並び、左腕最速タイ。チェンジアップも相手のタイミングを狂わせるなどアピールに成功した。

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