旭川大高が最後の甲子園で全国の球児に与えた希望。王者・大阪桐蔭に一歩も引かず「どれだけ強い相手でもいい試合ができる」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

大阪桐蔭のドラフト候補・川原嗣貴から2ラン本塁打を放った旭川大高の藤田大輝大阪桐蔭のドラフト候補・川原嗣貴から2ラン本塁打を放った旭川大高の藤田大輝この記事に関連する写真を見る 先頭の左打者・近藤伶音がいきなりセーフティバントを成功させる。「地区大会からああいう形で出塁するのが持ち味」と端場監督が語るリードオフマンが出塁し、バントで送って一死二塁。打席に入った3番の藤田大輝はこの日、神がかった打棒を見せる。

大阪桐蔭相手に3点リード

 身長169センチ、体重74キロと体格的には平凡ながら、端場監督が「チャンスに強いし長打力もある」と評価するほど藤田の打撃力は高い。バットのグリップを頭上に掲げ、右足を高く上げるダイナミックで個性的な打撃フォーム。川原の140キロ台中盤に達するストレートにも、藤田はまったく振り負けなかった。

 4球連続ファウルで粘った末に、最後は134キロのスプリットをとらえてレフト前へ。「憧れの場所で緊張していた」という藤田は、この打席で解き放たれる。以降はボールが今まで以上によく見えたという。

 1対0とリードして迎えた3回表には、川原が内角寄りに投じた140キロのストレートを一閃。ライトスタンドに放り込む高校通算10号2ラン本塁打になった。

「甲子園球場に入った瞬間に『広いな』と感じたんですけど、(この打席は)打った瞬間に『近いな』と思いました。完璧な当たりで、最高でした」

 ホームインした藤田がベンチに帰ると、興奮状態の仲間たちは口々に何かを叫んでいたが、藤田は「言葉にならない感じ」とまったく聞きとれなかった。まさに狂喜乱舞の先制攻撃で、旭川大高のリードは3点に広がった。

 藤田は第3打席でも川原のストレートをとらえ、センター前ヒットを放っている。大会前のアンケートで自分の性格について「いい事があるとすぐ調子に乗るタイプ」と回答した藤田だが、この大舞台でその気質が存分に生きた。

 だが、大阪桐蔭も黙ってはいなかった。3回裏には主将・松尾のタイムリーヒットとパスボールで2点を返すと、6回裏にはドラフト候補の大器・海老根優大がレフトスタンドに同点本塁打を放り込む。さらに7回裏には伊藤櫂人の勝ち越し本塁打が飛び出すなど、3得点で逆転に成功した。

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