大阪桐蔭・西谷監督が漏らした「察してください」の意味。3度目の春夏連覇へ盤石の体制か? (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 試合後の前田は「投げに行く時、かかとに体重がかかってしまったのをうまく修正できなかった。力みもあって......」と、ボールがばらついた理由を分析。「普段のブルペンではいいローボールが決まっていたので、少し修正すれば直せるはずです」と前向きに語った。

 この時点で、優勝するには4日間で3試合を戦い勝たなければならなかった。聞けば、東海大菅生戦のあと、前田は練習試合に投げることなく大阪大会に突入したという。ボールに力はあったが、東海大菅生戦で打たれた次の登板がこの日だったことを思えば、ベンチにも少なからず不安が生まれたのではないだろうか。

 それでも前田の次の登板が決勝であることは、これまでの起用からも濃厚。実際、準々決勝は川原、準決勝は別所が投げて危なげなく勝ち上がり、履正社との決勝は前田がマウンドに上がった。

ライバル履正社を8回無失点

 ところが、答えはすぐに出た。1回表が始まる前の投球練習で投じた7球が、明らかに4日前と違っていた。ボールの威力はそのままに、散らばることなくしっかり制球されていたのだ。これを見る限り、大きく崩れることは想像できなかった。

 試合後、前田は「前回のあと、うまく修正できたので今日は試合前からいけるという自信がありました」と振り返った。「前田から5点!」と意気込んでいた履正社打線を8回無失点。なかでも5回までの投球は完璧だった。

 大阪大会初登板からわずか3日間でしっかりと修正した経験が、また甲子園の戦いのなかでも生きてくるかもしれない。

 もし決勝での投球がなければ、少なからずチームのなかに不安要素として残っていたはずだ。それが履正社戦の快投で、視界を一気にクリアにした。決勝戦の試合後、西谷の表情は和らぎ、強い言葉で甲子園への決意を語った。

「このチームで3回目の春夏連覇に挑戦したいとやってきて、それに加えて初めて秋春夏制覇にも挑戦できる権利もいただきました。こんな大きな目標に挑戦できることはめったにないこと。ワクワクした気持ちですし、2つの大きな目標に向かって、全員で、甲子園で暴れたいと思います」

 センバツ後の宣言どおり、春よりも強くなってきた王者が、あらためてここから目指す夏の頂。すべての戦いが終わった時、西谷は再び達成感に包まれながら夏の山を語っているのだろうか。

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