大阪桐蔭・西谷監督が漏らした「察してください」の意味。3度目の春夏連覇へ盤石の体制か? (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 また「春の山を登っている時は2、3年生だけですけど、夏の山は3学年一緒。より一体感を持って登っていかないといけません」とも語っていた。

 より一体感を持っての山登りと聞くと、のどかなハイキング風景が浮かんできそうだが、大阪桐蔭が目指す山は、常に高く険しい。山を語って10年、いま西谷監督率いる大阪桐蔭が目指しているのは、これまで誰も踏み入れたことのない未踏の地である。3度目の甲子園春夏連覇と、同校初となる秋春夏制覇だ」

大阪大会を6試合1失点の圧勝

 圧倒的な強さでセンバツを制した大阪桐蔭は、夏の大阪大会も接戦皆無の圧勝劇。初戦から10対0、7対1、6対0、8対0、8対0、8対0、7対0。スコアを眺めているだけでも隙のない強さが伝わってくる。

 7試合でわずか失点1。センバツで好投を続けた川原嗣貴は安定感を維持し、ストレートの速さ・質共にレベルアップした別所孝亮が急成長。打線にも実力者が揃い、ミスや不調の選手がいてもカバー。マイナス要素が極めて少ないなかで、唯一気になったのが2年生左腕の前田悠伍だった。

 初戦(2回戦)から先発のマウンドに立ったのは別所、川原、南恒誠だった。リリーフでは左の小林丈太が登板したが、大会前半の3試合で前田が投げることはなかった。どの投手もレベルが高くそれ自体まったく問題なかったが、気になったのは前田の状態だった。

 4回戦の試合後、監督の西谷に前田の状態を確認すると、視線を遠くに置きながら「いつでもいける準備はしています」とひと言。普段なら囲み取材がひと段落すると、ユーモアを交えながら報道陣に対する西谷だが、この夏の大阪大会はやや様子が違って見えた。

「雰囲気が堅いですね」と言うと、「まあ察してください」とここでも短くひと言だけ。深い意味を持たず、思わず口をついて出た言葉だったかもしれないが、極めて順調に映る戦いのなかで指揮官が抱えるわずかな不安がこぼれ出たように感じた瞬間だった。

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