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愛工大名電が「虎視眈々虎意虎王」のスローガンのもと甲子園で躍動。もう夏に弱いとは言わせない (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今年のスローガンにもある「トラッキング」は、日本語で「追跡」を意味する。投手は弾道測定器・ラプソードを使って、回転数や回転軸などボールの質を細かく分析。打者も打球スピードを計測し、自身のパフォーマンス向上に役立てている。主軸打者の山田はその効果をこう語った。

「どのような軌道でバットを出せば、どんなスピード、角度で飛んでいくか、細かい数値が出るんです。なので、自分に合ったスイングができるようになりました」

 このような変革を経て、愛工大名電は2年連続14回目の甲子園出場を果たす。「トラ(虎視眈々)・トラ(虎意)・トラ(虎王)」のトラ3連発で甲子園出場となれば阪神ファンは喜びそうだが、お膝元の中日ファンは複雑な心境に違いない。

強豪・星稜に14得点で圧勝

 8月7日の甲子園初戦・星稜との好カードは、立ち上がりから意外なワンサイドゲームになった。星稜が誇るマーガード真偉輝キアン、武内涼太(2年)の両右腕に集中打を浴びせ、2回までに10得点を奪う。

 攻撃で目を引いたのは、アグレッシブな走塁だ。この試合、愛工大名電の二塁走者がシングルヒットで本塁に生還したケースが5回もあった。ひとつでも先の塁を狙う走塁は、今までの愛工大名電の野球にはない鮮烈さがあった。

 特別な指導者に走塁技術を叩き込まれたのだろうか。愛知大会で3盗塁を決めた俊足・美濃十飛に聞くと、「チームとしての指導はとくにないんですが」と前置きしてこんな答えが返ってきた。

「選手同士で走塁の作戦については細かく話し合っています。ただ打つだけじゃなくて、足で点をとれるような練習を選手同士で日々しています」

 選手主導でここまで高度な走塁技術を練り上げたとなれば驚異的だが、それも「虎の王」のなせる技なのだろうか。

 14対2と大勝した試合後、倉野監督はしみじみと勝利をかみしめた。

「愛知大会の決勝戦は序盤に10安打を打ちながら1点しかとれなくて、非常に苦しい展開でした。でも、今日はまったく逆で、『甲子園でこんなにヒットが出て、点が入るんだ』と、もうビックリして。選手たちが甲子園でのびのびとプレーしている姿を感動しながら見ていました」

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