セオリー無視の前進守備で痛恨の同点適時打。それでも負けなかった一関学院の不思議な力 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 セオリーは崩れた。普通に考えれば、一関学院にとっては負け試合だったはずだ。だが、野球はそれでもわからない。延長11回裏、寺尾皇汰(2年)のサヨナラタイムリーヒットが飛び出し、一関学院は6対5で京都国際を破っている。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」とは、故・野村克也氏がよく好んで使った格言だ。一関学院はまさに「不思議の勝ち」を拾った。そこに不思議な力を感じずにはいられない。

 高橋監督はこうも語っている。

「京都国際さん相手にどういう試合をするんだろう、どういう気持ちで向かっていくんだろう......と選手たちを見ていたんですが、僕の想像以上に選手たちはしっかりしていました。『絶対に勝つんだ』という気持ちが、もしかしたら相手よりも少しだけ上回ったのかなと思います」

 怪物2年生スラッガー・佐々木麟太郎を擁する花巻東、最速152キロの速球派・齋藤響介(3年)を擁する盛岡中央、伝統的に強打線を誇る盛岡大付。そんな強豪がひしめく岩手を制し、12年ぶりに夏の甲子園に戻ってきた一関学院。優勝候補の一角を破り、攻守に力があることは存分に証明した。

 さらには「前進守備」の火中から九死に一生を得て、京都国際という大きな壁を乗り越えた。不思議な力を持つ一関学院は、甲子園に愛されたチームなのか。次戦は8月12日、明豊(大分)との2回戦を迎える。

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