「大野のワンマンチームと呼ばせない」。大島高校ナインが見せた意地と成長の夏 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 閉会式を終えると、塗木監督は涙を流す選手たちを前にこう語りかけた。

「ナイスゲーム! 泣く必要なんてない。みんながやってきたことはすばらしいことだ。みんなが今までできなかったこと、人からできないと決めつけられたことをやってのけたんだ。『島から甲子園なんて無理だ』『夏の決勝なんて無理だ』『粘り強い試合はできない』とか言われたよな。でも、やればできる。これからも自分の可能性を信じて、みんなの可能性を信じて、人生を生きていけばいい。

 俺からみんなにお礼を言いたい。自分の教え子たちの思いをずっとつなぎながらやってきたけど、その子たちの思いもみんなが甲子園に行ってくれたことで果たしてくれた。うれしかったし、ありがたかった。だから、今回は夏の甲子園には行けなかったけど、みんながやってきた野球を見て、次なる大島高校の後輩たちが達成してくれる日がくる。それをみんなはスタンドで、テレビの前で、職場で応援してやればいい。それが追い風になるよ」

 平和リース球場のスタンドからは、選手たちに向かって「ありがとう、ダイコウ(大島高)!」「よくやった!」などとねぎらいの言葉が次々に飛んだ。

 選手たちが卵の内側で思いきり叩き、外側で待つ指導陣が引っ張り上げる。そんな大島高校の啐啄同時はこの夏、多くの人々の心を動かした。

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