「履正社は大丈夫か?」と不安の声も。名将・岡田龍生のあとを継いだ新指揮官の思い (3ページ目)

  • 谷上史朗●文・写真 text & photo by Tanigami Shiro

 聞き上手な指揮官らしいこだわりで、練習中も積極的に選手と言葉を交わしていた。調整能力に長け、個々の力を引き出すことに優れた指導者像が浮かぶ。

 岡田退任のニュースが流れた時には、周囲から「履正社は大丈夫か?」「野球部の強化をやめるのか?」といった不安の声が上がった。多田へ直接問い合わせてきた中学のクラブチーム関係者もいたという。そんな声に多田は、「これまでと何も変わることはありませんし、これからより強化していけるよう、しっかり結果を出していきます」と返した。

 その言葉どおり、公式戦初采配となった春の大阪大会で準優勝。興国、東海大仰星、大商大堺といった実力校を倒し、決勝で大阪桐蔭に敗れるも1点差の好ゲームを演じた。

この夏の目標は「13連勝」

 そして新生・履正社として挑む初めての夏。やはり、目の前に立ちはだかるのは大阪桐蔭だ。昨年は大阪大会準決勝で対戦し3対5、春は決勝で2対3。ただ、秋はスコア以上の差を感じたが、春については紙一重の勝負に思えた。しかし多田は、この1点差に大阪桐蔭の強さを感じたと振り返った。

「3回に2点を先制したあとのチャンスで追加点を奪えず、その裏に松尾(汐恩)くんの1発ですぐ1点差にされた。2対0のままもう少しイニングが進んでいたら、展開も違ったはずですけど、そうさせないゲーム運びのうまさ、選手の底力......結果は1点差でしたけど、そのなかに桐蔭さんの強さを感じたのがあのゲームでした」

 春以降は大阪桐蔭との差を埋めるべく、取れなかった1点、防げなかった1点に徹底してこだわってきた。

 近年は大阪桐蔭と"2強"として語られる履正社だが、夏の直接対決となると圧倒的に分が悪い。一昨年の代替大会では勝利したものの、甲子園がかかった夏となると現在11連敗中。

「僕らの1つ下のチームが初めて甲子園に出た時(97年)に勝って、その2年後も勝ったんです。寝屋川球場で僕も見に行っていましたが、すごい乱打戦で。大阪桐蔭は西谷(浩一)さんが監督になって初めての夏でした。でも、そこから夏はまったく勝てなくなって、僕が指導者になってからは1回も勝っていません」

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