最速148キロで一躍ドラフト候補に。常葉菊川のサイドスロー・安西叶翔はポテンシャルの塊

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuhi Takahiro

「サイドスロー」と「スリークオーター」の境目はどこにあるのだろうか。

 野球を見ていると、時にそんな議論になる。たとえば、平成期の巨人のエースだった斎藤雅樹は、サイドスローともスリークォーターとも評された。

 リリース位置が両肩より高いか低いかで見分けるなど、定義づけを試みる人もいる。だが、分類したがるのはグラウンド外のメディアやファンばかりで、プレーする当人からすればどうでもいいことなのだろう。投げやすければ、どう分類されようが関係ないからだ。

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春に自己最速の148キロを記録

 常葉大菊川に安西叶翔(あんざい・かなと)というドラフト候補右腕がいる。昨秋までのスリークオーターから冬場にサイドスローに転向したところ、大化けしたと報道されていた。

 だが、本人に「どうしてサイドスローに変えたのですか?」と問うと、安西は首をひねってこう答えた。

「サイドかと言われると、自分ではサイドじゃないかもしれないと思っています」

 身長186センチ、体重85キロの堂々たる体躯。29センチという大きなスパイクで6足分の歩幅をとり、腕を横からしなやかに振り抜く。サイドスローとも、スリークオーターとも言えそうな腕の振りの角度である。安西はこうも言っている。

「腰の回転軸は横なので、それを生かせるように腕の振りはあまり高い位置にはせず、自分に合う角度をいろいろと試して今の位置になりました。高めの位置も低めの位置も試しましたけど、自然とスピードが出る角度になっています」

 今春に最速148キロを計測し、一躍ドラフト戦線に浮上してきた。7月9日に掛川球場で行なわれた静岡大会初戦の市沼津戦には、多くのスカウトがバックネット裏に詰めかけた。

 この試合で安西は8回を投げ、被安打5、奪三振8で無失点に封じて4対0の勝利に貢献している。

 与四死球0の数字が示すように、打たせてとる危なげない投球だった。本人に聞くと「早めに2ストライクに追い込んで三振を狙いにいく時だけ、全力で腕を振った」という。全力のストレートは何球くらい投じたのかと聞くと、安西は「1〜2球くらい」と答えた。

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