大学野球選手権で評価が上昇、ドラフト上位候補の投手3人。敵将も「絶対打てない」直球に脱帽 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

優勝した亜細亜大相手に好投した近畿大・久保玲司優勝した亜細亜大相手に好投した近畿大・久保玲司この記事に関連する写真を見る

王者・亜細亜大を苦しめた快速左腕

久保玲司(近畿大4年/172センチ67キロ/左投左打/関大北陽高)

 今大会は亜細亜大が20年ぶり5回目の優勝を飾ったが、その亜細亜大を8回まで無失点と苦しめたのが久保だった。

 近畿大は1回戦の和歌山大戦で久保を起用せず、シード校の亜細亜大戦に先発させている。その起用について、田中秀昌監督はこう語った。

「久保には大会前から亜細亜の試合に集中させていました。今日にかける意地、気持ちが伝わってきました」

 立ち上がりからストレートが走っていた。久保は最速151キロをマークしたと言われるが、実際は球速より球質で勝負するタイプの左腕だ。スピードガンでは130キロ台中盤の平凡な球速が表示されていたが、亜細亜大の強打者たちはことごとく久保の速球に差し込まれた。久保は独特な表現で自分の投球を振り返った。

「そんなに力を入れて投げなかったんですけど、東京ドームのマウンドも独特なので自然と球が走ったのかなと思います」

 久保は投球フォームも独特だ。セットポジションから右足を上げたあと、両手を捕手側にグイッと寄せてから両手を割って体重移動する。

「前にヒジをケガしてからうまく投げられない時期があったんですけど、あの動きを入れたほうがリズムよく腕が上がってくるようになったので。それ以来、今の投げ方をしています」

 ストレートとチェンジアップのコンビネーションも効果的で、左投手にとって鬼門になりがちな右打者も苦にしない。体格的にも球速的にも見栄えはしないかもしれないが、濃密な中身で勝負できる希少な存在だ。

 ほかにもエースとして優勝に大きく貢献した青山美夏人(亜細亜大)、持ち前の快速球に安定感が加わった眞田拓(名城大)、小柄ながらキレと制球力を披露した左腕の伊原陵人(大阪商業大)、右肩痛から復帰してリリーフで4強入りに貢献した木村光(佛教大)らの存在が光った。

 ドラフト会議まで残り4カ月に迫り、逸材たちの野球人生をかけた戦いはますます熱を帯びていく。

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