2022.06.08

名門校から勧誘が続々。怪童・内藤鵬はなぜ日本航空石川を選んだのか。「どの高校に行くにしても、入ってからの自分次第」

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

180センチ、100キロのスラッガー

 身長180センチ、体重100キロの大きな体は、どこにいてもよく目立つ。そんな選手が汗を飛び散らして懸命に走っていれば、当然目を引く。それがたとえ、お世辞にも速いとは言えないスピードであっても。

 日本航空石川の室内練習場では、走塁練習が続いていた。捕手がワンバウンド投球を弾いたらスタートを切る、「ワンバウンドゴー」。先頭に立って取り組んでいたのが、内藤鵬(ほう)だった。

日本航空石川の主砲でキャプテンの内藤鵬日本航空石川の主砲でキャプテンの内藤鵬 この記事に関連する写真を見る 「走ることはずっと嫌いなんです」

 内藤は人懐っこい笑みをたたえてカミングアウトした。

 内藤は高校通算47本塁打(6月7日時点)の大型スラッガー。今年のドラフト候補に挙がる注目選手である。

 走塁練習のあとは、バント練習が続いた。強打のイメージが強い日本航空石川だが、2018年春のセンバツベスト8進出以降は細かいチームプレーも練習に取り入れている。

 内藤は「ノーアウト一塁!」などと想定した状況を叫んでから、ピッチングマシンが繰り出すボールをバントしていく。時には相手バッテリーにウエストされる想定で、スクイズの練習までしていた。

 走塁にしてもバントにしても、内藤の個性が生きるプレーではない。それでも、内藤はひたむきに目の前の練習に取り組んだ。「バントのサインなんて出ないんじゃないですか?」と聞くと、内藤はこう答えた。

「試合でサインが出たことはないんですけど、キャプテンの自分が一番真面目にやっていれば、『サインの出ないあいつでもやってるんやから、しっかりやろう』と思ってもらえるので」

 愛知の強豪軟式チーム・東山クラブ時代から、内藤の評判は全国に知れ渡っていた。誘いのあった高校名を聞くと、誰もが知るような東日本の名門チームの名前が次々に挙がった。内藤にいち早く声をかけた日本航空石川の中村隆監督は、「ビッグネームから声がかかっていたので、ウチは無理かなと思っていた」と本音を明かす。