ドラフト戦線で北海道が熱い。脅威の20奪三振男、離島の快速左腕など大勢のスカウトが集結 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 4回表に守備の乱れもあって1点を失うが、門別の投球は乱れない。2対1と勝ち越し、グラウンド整備を挟んで迎えた6回表には「ギアを上げた」と2奪三振。終盤の4イニングで7奪三振、計14奪三振の快投でチームに勝利をもたらした。

 東海大札幌の大脇英徳監督は「練習量が少なくても、コツコツやってきたなかでベストピッチを見せてくれた」と称えた。じつは4月に体調不良で約2週間離脱し、87キロあった体重は一時80キロまで激減していた。今大会では85キロまで回復し、高パフォーマンスにつなげた。

 とくに目を引いたのは、決め球の迫力だった。門別が自信を持っているのは、対右打者へのインコースのクロスファイアーに、対左打者へのアウトコースのスライダー。三振のほとんどはこの2球種で奪っている。

教訓となった八戸学院光星戦

 門別には教訓にした試合がある。今春の青森遠征で八戸学院光星と対戦し、6回を投げ12三振を奪った。その一方で、3本の本塁打を浴びて6失点。門別は「1球の甘さを知った」という。

「2ストライクで追い込んだ後の決め球は、気持ちで投げたい。光星戦で『1球で決めきれないといけないんだ』と学びました」

 決め球での集中力を見せた一方、独特の感性を垣間見せるシーンもあった。対右打者のアウトコースにややシュートする半速球があったため球種を尋ねると、門別から「ストレートです」と意外な答えが返ってきた。

「これは自分の考えで、力を抜いて真っすぐを投げると、かえって打ちとりやすいんです。今日は3球くらい投げました」

 あえてスピードを落としたストレートを投げ、強いシュート回転がかかったボールを振らせる。門別の器用さとしたたかさを感じさせた。

 とはいえ、能力が高いからこそ、必然的に求めるものは高くなる。大脇監督に今後の門別に対して注文したいことを尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「彼が野球人としてどこを目指しているのかが大事です。もちろん、甲子園を目指しますけど、その先を考えているか。甲子園で勝って、プロに行って......と彼なりにどこを目指すのか。今日はベストピッチでしたけど、ひとりの野球人としてどうなのか。自分も含めて掘り下げていきたいと思います」

 単なる北海道の好投手に留まるのか、それとも高校球界を代表するサウスポーになるのか。門別啓人にとって、今が分岐点なのかもしれない。

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