ルパンのように技術を盗み、カメレオンのように擬態する男・大阪経済大の151キロ右腕は「カッコええ」プロを目指す (3ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 それでも、毎週バッティングセンターが主宰する練習会に通っていたところ、才木に声をかけてきた大人がいた。北海道栄の渡邊伸一監督(当時)だった。

「『高校決まってんのか?』と聞かれて、全然決まってなかったので、『それならウチへ来い』と」

 北海道での寮生活は、言葉遣いから叩き込まれた。才木は「いろいろ教育していただきました」と意味深に笑う。オフに帰省して中学校に顔を出すと、教師たちは「才木が敬語を使えてる!」と一様に感動を示したという。

 高校では最速145キロをマークし、札幌大谷高の菊地吏玖(現・専修大)らとともに北海道の注目投手に名を連ねた。スカウトからの誘いの声もあったが、才木は大学進学を決める。

「甲子園にも出てなくて、育成(ドラフト)で獲られても2〜3年でクビになったら20歳そこそこで無職やないですか。『俺の場合は何したらいいんや?』と思って、『執行猶予』のつもりで大学に行かせてもらいました」

元プロ監督も「向上心の塊」と絶賛

 ただし、大学生活も順風満帆ではなかった。下級生時にはケガをして、「野球をやめよう」と本気で考えたこともあった。だが、幼稚園からの親友に相談すると、「アホか」と一喝された。

「親にどんだけ迷惑をかけてきたか、おまえも社会人になったらわかる。中途半端にやめたら、一番の親不孝モンやで」

 親友からの言葉に心を動かされ、才木は本気で野球に打ち込もうと決意する。大学3年秋の関西六大学リーグではリーグ1位となる防御率0.74をマーク。大阪経済大の山本和作監督も、才木のことを「向上心の塊」と評価する。

「うまくなりたい、抑えたい思いは人一倍強いです。時に熱くなりすぎるところもありますが、それも彼の長所。素材ももちろんいいので、伸びしろをすごく感じています」

 山本監督自身、巨人、オリックスで内野手としてプレーした元プロ野球選手である。プロの世界を知る山本監督からすると、才木は「昔の荒ぶったプロ野球選手の匂いがする」という。

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