藤原や根尾がいた大阪桐蔭戦の快投から3年。ドラフト目前でJR東日本・山田龍聖の気合いも評価も急上昇

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 ドラフト会議まで1週間を切ったタイミングで、猛烈なラストスパートをかける21歳の若者がいる。JR東日本の左腕・山田龍聖だ。

 3年前の山田を記憶する野球ファンも多いだろう。根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)を擁して甲子園春夏連覇を果たすタレント軍団・大阪桐蔭から11三振を奪った高岡商(富山)のエースである。

 だが、その時点で山田の左ヒジは悲鳴を上げていた。プロ志望届を提出せずに進んだJR東日本では回復に努め、2年目の昨季も中心投手にはなれなかった。雌伏の2年を経て、山田はドラフト解禁となる今季にブレークの兆しを見せている。

最速153キロを誇るJR東日本の山田龍聖最速153キロを誇るJR東日本の山田龍聖この記事に関連する写真を見る とくにこの数カ月での成長ぶりには、驚かされるばかりだった。

 6月21日、社会人日本選手権・関東代表決定戦でJR東日本は鷺宮製作所に1対2で敗れた。1点ビハインドの8回裏、山田は3番手としてマウンドに上がっている。その時点では、首脳陣から大事な公式戦の先発マウンドを任されるほどの信頼は得ていなかったのだ。

 1球投げるたびに山田は「オラ〜!」と吠えた。テイクバックはコンパクトながら、高いトップの位置から強く叩きつけるように腕を振る。指にしっかりかかっていない137キロもあれば、爆発力のある148キロもある。山田の雄叫びとともに、球筋は四方八方に暴れた。

 この日は1回を投げて2奪三振、無失点。投球数は25を数え、四球も1つ与えた。3年前に甲子園を沸かせた時よりも荒々しい投球スタイル。よく言えばエネルギッシュ、悪く言えば力任せの投球だった。

 試合後、JR東日本の浜岡武明監督は山田を起用した意図を「流れを持ってきたい展開だったので、山田に3つ三振を取ってもらいたいと期待して送り出しました」と語っている。また、首脳陣としては「ボールを置きにいってしまい、腕が振れなくなる悪いクセがある」(坂上拓コーチ)という山田に、とにかく強く腕を振ってもらう狙いもあったようだ。

 山田は試合後、「去年まではファウルにされたストレートが、最近は空振りが取れるようになってきました」と手応えを語っている。

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