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「こんなにいい投手だったとは...」。甲子園のマウンドで躍動した将来性抜群な3人の逸材

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

夏の甲子園で見つけた未来のドラフト候補たち〜投手編

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 2年ぶりの開催となった夏の甲子園だが、原則無観客での開催となったためネット裏にはプロスカウトと報道関係者しかいない。彼らが視線を注ぐ選手たちはひと目でそれとわかるが、一方でよく目を凝らせて見れば「いいなぁ」と思わず見とれてしまう選手もいる。

 即プロというわけではないが、大学・社会人へと進み、3、4年後にはドラフト戦線を賑わせる選手になるのではないか......。この夏、そんな期待を抱かせてくれる選手を何人か見つけたので紹介したい。

東明館戦で完封勝利を挙げた日本航空のヴァデルナ・フェルガス東明館戦で完封勝利を挙げた日本航空のヴァデルナ・フェルガスこの記事に関連する写真を見る まず、想像していたよりずっとすばらしい投手だとびっくりさせられたのが日本航空のヴァデルナ・フェルガス(3年/左投左打)だ。東明館(佐賀)との初戦、淡々と投げ進めるうちに、気がついたら完封していたから驚いた。

 父がハンガリーとドイツの血を引いていて、母は香港人だという。

「そうした話題がなかったら、普通のピッチャーですよ」

 以前、地元の関係者がそのような情報をくれたのだが、とんでもない。長所の塊のようなピッチャーだった。

 188センチ、85キロ。これだけのサイズがあって、しかも左腕というのだからそれだけでも貴重である。さらに、力を入れずに投げられるメカニズムが、球持ちのよさとキレを生んでいる。また、プレートの一塁側を踏んでスリークォーターで投げるから、右打者にはストレートもスライダーも「これでもか」と言わんばかりに食い込んでくる。

 走者を背負っても、自分のペースで淡々と投げられるメンタルもたくましい。

 そういえば、こんなシーンがあった。東明館戦で4対0とリードして迎えた9回のマウンドに上がったヴァデルナは、まず踏み出す歩幅をスパイクで慎重に測ってから投球練習を始めた。こういうフラットさが、チームメイトを安心させるのだ。

「球速がないから、厳しいでしょう」

 そう語るスカウトもいたように、この秋のドラフトで指名される可能性は低いだろう。しかしヴァデルナのピッチングを見ていると、130キロ台前半のボールでも打者は差し込まれ、スライダー、ツーシームを駆使して15キロほどの緩急差を生み出している。最後まで乱れることなく、東明館打線を完封して見せた。

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