「こんなにいい投手だったとは...」。甲子園のマウンドで躍動した将来性抜群な3人の逸材 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 とはいえ、強力打線相手にも怯むことなく、持ち球をすべて繰り出して向かっていく姿勢と、ボールの精度の高さは十分に将来性を感じさせた。

「いいピッチャーだな」と思って県大会の成績を見たら、45イニングで被安打14、奪三振45、四球7と抜群の安定感を見せていた。甲子園に出場していなかったら、見逃すところだった。

 薮野のピッチングを見て思い出しのが、かつてヤクルトで活躍した館山昌平(現・楽天コーチ)だ。両サイド低めを突く制球力と攻めのピッチングスタイルは、まさに現役時代の館山とダブる。ちなみに、館山を日大時代に育てたのが、鹿島学園の鈴木博識監督である。

 大学を卒業する頃には、今の体重65キロも80キロ近くの大人の体に変わっているだろうし、球速だって格段とアップしているはずだ。

 投手で最後に紹介したいのが、深沢鳳介とダブルエースとして専大松戸の春夏連続出場に貢献した岡本陸(3年/右投右打)

 初戦の明豊(大分)戦は深沢が完封勝利をおさめたため岡本の出番はなかったが、ブルペンのピッチングが気になって仕方なかった。目いっぱい指にかかったボールが、次々と構えたミットに吸い込まれていく。制球力の高さとボールの強さに目を奪われた。

 県大会では深沢とほぼ同じだけ投げて、決勝の木更津総合戦では9イニング以上のロングリリーフをやってのけた実力者だ。ほかのチームなら、間違いなく大エースになれると思ったが、深沢がいたからこそここまでの成長につながったのかもしれない。

 2回戦の長崎商戦で先発を任された岡本は、5回途中11安打5失点と打ち込まれ、高校野球生活は終わった。だがこの悔しさを糧に、今後大きく成長してくれることを切に願う。

 今秋のドラフトで1位候補に挙がる西日本工業大の隅田知一郎は、波佐見高校(長崎)時代に2017年夏の甲子園で開幕直後の彦根東(滋賀)戦に6点を許して敗戦。とくに話題になることもなく、高校野球生活を終えた。それでも隅田のように、高校時代はそれほど目立たなくても3、4年後、別人のような変貌を遂げる球児は少なくない。

 ここで挙げた3人以外にも、将来のドラフト候補として球界を盛り上げてくれる選手が出てくることを楽しみにしている。

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