大阪桐蔭が9回2死からの逆転劇。「何かをやってくれる男」がサイクル安打で奇跡を起こした (5ページ目)
直後の11回表、テンションが最高潮に達していた澤村が打席へと向かう。
「絶対に打つからな!」
ベンチで盛り上がる選手にそう宣言し、澤村は「よし!」と気合を入れた。
フルカウントからの8球目、球種はストレートなのかシュートなのか判然としないが、内角の球を打ったことだけは覚えている。この日、4本目の安打はライトスタンドへと飛び込む決勝のホームランとなり、同時に夏の大会史上3人目のサイクル安打達成となった。
「打った瞬間『いった!』と思いましたね。なんか甲子園でホームランを打った人って、ガッツポーズしているイメージがあって、自分もそれっぽいことをやったんですけど、ちょっとやりすぎましたね(笑)」(澤村)
絶対に何かやってくれる男──小さな大打者は、甲子園の大舞台で記録にも記憶にも残る活躍でチームを救った。それでも澤村は、自身のことよりチームの勝利をなによりも喜んだ。
「(9回に)自分のあとにつないでくれたヤツら。タマ(玉山)のバックホーム。そういうのがなかったら、サイクルは達成できなかった。みんなに感謝しかなかったです」
球史に残る激闘を制した大阪桐蔭は、センバツに続きベスト8進出を決めた。しかし、まだ「全国制覇」を軽々しく口にする者はいなかった。準々決勝では「東の横綱」が待ち構えていた。
(つづく/文中敬称略)
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