2020.11.23

ドラフト漏れも揺るがない思い。
NTT西日本・宅和は東京ドームで恩を返す

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

「周囲のおかげ、いろいろな縁が重なったおかげで、今も自分は野球が続けられている」

 22日開幕の第91回都市対抗野球大会に出場する、社会人野球の強豪・NTT西日本に所属する宅和健太郎は、しみじみとこう語り、「社会人野球を広く知ってもらいたい。盛り上げていきたい」という熱い思いを口にする。身長は170センチ台半ばと決して大柄ではないが、鍛え上げた下半身を生かしたダイナミックなフォームから150キロに迫るストレートを投じる本格派左腕だ。
 
NTT西日本の好左腕・宅和健太郎NTT西日本の好左腕・宅和健太郎  大卒2年目でドラフト指名解禁となった昨年、そして今年も複数のプロ球団から獲得の可能性を示す調査書が届くなど、ドラフト候補にも挙がっていた宅和だが、その野球人生を紐解いていくと、大学、社会人と上の世界で野球を継続することの可能性を感じさせられる。

 松江商高(島根)時代、最後の夏の背番号は10。入学以来エースの座を争い続けた同期の好右腕・増本凌也とともに、夏前に発売される雑誌には「増本、宅和の実力派投手2枚」のように紹介されていた。

 しかし、夏前の練習試合で三盗を試みた際に足を骨折。指導にあたっていた監督の和田誉司(現・浜田高監督)は、悔しそうな横顔で当時を振り返る。

「宅和が高校3年だった夏は、チャンスだと思っていました。増本と宅和を交互に先発させて勝ち上がれば、十分甲子園を狙えると。はっきり決めていたのは、準決勝は増本、決勝は宅和で勝負すること。それぐらい期待していたんですけどねえ......(苦笑)」

 何とか投球練習はできる状態に持っていったが、本調子にはほど遠かった。最後の夏の主戦場は、グラウンドの片隅にあるブルペン。準備する姿を相手チームに見せることで、「宅和の登板もあるぞ」と思わせる役割をこなした。

 その夏、松江商高は右のエースである増本の踏ん張りで4強まで勝ち進んだが、連投の疲労もあり、準決勝の9回に力尽きてのサヨナラ負け。投げられない悔しさを噛みしめ、周囲も「宅和が投げられる状態だったら......」と感じる終わりを迎えた。