「畑中が必要だ」。鳥取城北で唯一ベンチ入りの2年生が期待に応えて3安打

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

◆「甲子園交流試合」注目のスラッガー10人>>

 第1試合が終わると、鳥取城北のユニホームを着た部員たちがぞろぞろと三塁側内野席中段へとやってきた。その数およそ100名。2020年甲子園交流試合でベンチ入り人数が従来の18人から20人に増枠されたといっても、部員が126名もいる鳥取城北では100名以上がベンチから外れてしまう。

 3年生部員だけで51名もいる。是が非でもベンチに入りたい部員ばかりに違いない。そんななか、2年生で唯一ベンチ入りしたのが、畑中未来翔(みくと)だった。

明徳義塾戦で3安打を放った鳥取城北の畑中未来翔明徳義塾戦で3安打を放った鳥取城北の畑中未来翔「甲子園のベンチ入りメンバーを決めるときに、部員全員で投票があったんですけど、普通なら3年生は自分を優先して投票すると思うんです。でも、みんな僕を選んでくれて。河西(威飛/いぶき)さんや吉田(貫汰)さんは『1番は畑中や』と言ってくれて、その思いに応えたいと思っていました」

 畑中は身長178センチ、体重74キロの右投げ左打ちの外野手。昨秋の公式戦では1番打者として、8試合で打率.375、2本塁打、4盗塁と活躍している。低い重心の構えでボールを呼び込み、右へ左へと強打できる好打者だ。

 交流試合で対戦する明徳義塾は甲子園常連の名門。昨秋は四国大会で優勝しており、甲子園経験者も多い。鳥取城北は劣勢に立たされると見られていた。

 だが、鳥取城北は名門相手に互角に渡り合う。口火を切ったのは畑中だった。1回表、1番打者として打席に入った畑中は、明徳義塾の先発左腕・新地智也からレフト前ヒットを放つ。新地は昨夏から甲子園マウンドに立っている好左腕だった。

「コントロールがいいので、どんどん振っていこうと思っていました。去年の秋からずっと1番バッターを任されているので、絶対に塁に出て流れを持ってくるのが仕事なので」

 畑中のヒットを皮切りに3番の河西、4番の吉田にも連打が出て、鳥取城北は先取点を挙げる。

 その後、試合巧者の明徳義塾にノーヒットで2点を奪われ逆転を許すものの、8回表には再び畑中がチャンスメイクする。一死二塁の場面でライト前に運び、一、三塁とした。

 畑中が一塁に到達したときだった。三塁側内野スタンドから、「パチ、パチ......」と拍手が自然発生したのだ。

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