父は元プロ野球選手でコーチ。
甲府工・山村貫太、「恩返し」の夏
甲府工・山村親子「ふたりの夏物語」(前編)
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組み合わせが決まると、甲府工の選手たちは頂までの道のりを想像するようにガッツポーズし、雄叫びを上げた。
「みんな『よっしゃー!』って。最後の大会で、こんないい組み合わせはないだろって。本当に喜んでいましたね」
チームの副主将を担う3年生の山村貫太が話す。だが実際は、甲府工のブロックは喜ぶどころか、落胆してもおかしくないほどの激戦区だ。
甲府工のコーチを務める山村宏樹氏(写真左)と息子であり3年生部員の貫太 新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった全国高等学校野球選手権の地方大会の代替大会である「2020年夏季山梨県高等学校野球大会」。甲府工は初戦の日大明誠を皮切りに、東海大甲府、日本航空、帝京三......といった強豪私学と同ブロックに入った。
「夏の甲子園」は奪われたが、だからといってチームの士気は下がることなく、むしろ例年以上に高いと、山村は強調する。
「去年も本気でしたけど、別の意味で本気度が違うというか......今年は特別ルールで、試合ごとにベンチ入りメンバーを代えられる。監督がガチでメンバーを決めると言っているので、3年生全員が『絶対に(ベンチに)入る!』って。練習中や練習試合での声は、マジですごいですから。自分もそうですけど、めちゃくちゃ気合い入っています」
「恩返し」。山村は代替大会で優勝することの意味について、そう答えた。山村にとってそれは「チーム」と「個人」のふたつの意味を持つ。
チームとしては、2006年夏を最後に甲子園から遠ざかる甲府工の復活だ。山梨の頂点に立つことで、再び「強豪」の印象をとどろかせる。それが指導者や後輩のためにもなる。
そして個人としては、親への感謝だ。
「初戦はまだ父の名前が出るかもしれないですけど、勝ち進んでいくにつれ『山村貫太』って名前が多く出るようになれば......それは父ではなく、自分が活躍したことの証明になるので。それが父と母への一番の恩返しになるのかなって思っています」
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